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観察者ではなく(上映会報告2009/11/22)

わくわくならしの映画祭の翌日は、朝6時に起きて京都へ向かいました。以前京都の上映会で京都へ行ったとき、京都大学で非正規職員の5年で雇い止め問題に反対して座り込みをしているユニオンエクスタシーを訪問しました。今回は、ユニオンエクスタシーが、京都大学の学園祭の企画で「国際すわりこみ映画祭」(!)を開催し、それで「ブライアンと仲間たち」も上映するということで、私も呼んでくれたのでした。

映画祭のラインナップは、ユニオンエクスタシーのドキュメンタリー「くびくび」、韓国の非正規労働の女性たちが、職場であるスーパーマーケットを占拠した「外泊」、そしてブライアン。日本、韓国、イギリスと、まさに国際的な座り込みなのですが、ユニオンエクスタシーという組合のネーミング同様、いつも面白い名前をつけるなぁと感心していました。しかも、映画祭の副題は「立ち上がれ! そして座り込め!」・・・!

ユニオンエクスタシーのブログ
http://extasy07.exblog.jp/

新幹線の中で睡眠不足を補った私は11時半ごろに京都駅に到着しました。
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京都駅から京都大学までは、JR、私鉄を乗り継いで行くことにしていました。「東福寺駅」で私鉄に乗り換えます。・・・と、小さな駅が溢れんばかりの人・人・人!! これは一体なんなのでしょうか? まるで花火大会のような人出です。
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聞くと、東福寺は紅葉の名所として有名で、この三連休で沢山の人が訪れるそうなのです。私は映画祭までまだちょっと時間があったので、ちょっと東福寺まで行って見る事にしました。(←ミーハーです)

いや~、それにしてもすごい人の数です。”風情”とかまったく・・・。添乗員に引率されたツアーのお客さんが沢山いました。
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駅には「東福寺まで徒歩10分」と書いてあったので、さっと行って見てこようと思った私でしたが、混雑でなかなか思うように歩けず、途中で引き返すことにしました。紅葉のせいで映画祭に遅れては本末転倒になっちゃいます。

東福寺から私鉄に乗り、京都大学のある「出町柳」駅に到着しました。駅から大学までは案内図などはほとんどありません。それで前回道に迷った私は、今回早めに人に聞くことにしました。ちょうど道を尋ねた二人組みが、大学のそばにある安くて美味しい食堂に行くところだと言うので、一緒に大学まで歩いていきました。

京都大学のシンボルである時計台とクスノキ。以前訪れたときはここにユニオンエクスタシーの「くびくびカフェ」がありました。時計台、クスノキ、くびくびの三点セットの光景しか知らない私には、なんだか寂しく見えます。
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なぜクスノキの下から移動したのかといえば、大学側から明け渡しの訴訟を起こされていたからだそうです。(結局、裁判の前に自ら移動したにもかかわらず、大学側は訴えを取り下げることはせず、裁判所も判決を下す、という異例の裁判となったようです)

明け渡し判決に対するユニオンエクスタシーの声明
http://extasy07.exblog.jp/11486150/

くびくびカフェ、今度は松の木のそばに移動していました。ユニオンエクスタシーのメンバーである小川さんにお会いしました。
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(↑ちなみに手前の布団カバーは、くびくびカフェでの上映時に使うスクリーンだそうですhappy01

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この日は学園祭で、出店が沢山出ていました。くびくびカフェの前には「模擬店のようですが、京大11月祭とは関係ありません」とのたて看板が。大学側からの要求だそうです。
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カフェ内に薪ストーブを発見!! 暖かそうですが、この辺で薪を探してくるのだとしたら大変です。
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映画祭の会場である、文学部の新館へ向かいました。
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映画祭の宣伝チラシが貼ってありました。
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人が段々集まってきました。
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映画祭の開始は1時からで、最初はドキュメンタリー「くびくび」の上映となっていましたが、ユニオンエクスタシーの井上さんが風邪を引いてしまって編集が出来ず、急遽、これまで撮りためた素材を解説しながら部分的に再生することになりました。
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井上さん
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小川さん
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素材の抜粋上映。完成が楽しみです!
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くびくびの抜粋上映の後は、休憩を挟んで韓国のドキュメンタリー「外泊」を観ました。この映画、5月に20分の予告編ロングバージョンを観て、500人の女性たちがスーパーマーケットを占拠し、歌い踊るという迫力の映像にとても驚いたのでした。その後東京での上映会に参加できなかったので、今回フルバージョンを観られることを、とても楽しみにしていました。

外泊のウェブサイト(キム・ミレ監督のインタビューなどもあります。必見!)
http://film.weabak.info/

「外泊」そして「ブライアン」と続けて観て、”座り込み”という共通テーマはあるとしても、その捉え方はずいぶん違うと改めて思いました。それは、韓国とイギリスでの女性の立場の違いもあると思いますが、それ以前に私としては”作り手の視線”の違いを強く感じました。「外泊」のキム・ミレ監督は、ジェンダーや労働者といった視線で作品を作り続けている方です。よって、「外泊」の座り込みの活動を、女性労働者の視点から、理想に燃えつつも、夫や家事との両立に悩んだり、彼女たちの運動が政治に利用されていく過程(男性中心の大きな労働組合や大統領選挙)を描いたりしています。

それに対し私の映画のほうは、登場してくる女性が全員シングルマザー(パーラメント・スクエアに関わる女性はそのほとんどがシングルマザーまたは独身)ということもあり、家庭との両立といった話はほとんど出てきません。また、イギリスという国自体がもともと個人主義の国で、ブライアンたちは仲間ではあるものの、各自の活動はスタンドプレーが中心です。そして何より、作り手である私の関心が”運動体とジェンダー”ではなく”表現の自由”にあります。なので、それを中心に活動を捉えていっているわけです。

とはいえ、パーラメント・スクエアの活動も現在9年目に突入しているのですから、各人の負担は多いです。彼らの生活についてや将来についてもインタビューをしましたが、私は最終的にはそれらのインタビュー内容を映画に採用しませんでした。

「外泊」の上映が終わり、詩人のTASKEさんのパフォーマンスがありました。
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最新の詩集「七転び八起き列伝」から三篇読むとのこと。・・・が、時間が押しているので二篇にして、と小川さんが駆けつけます。
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もみ合いの末、結局TASKEさんは三篇の詩の朗読をしました。このTASKEさん、後でちょっとお話しする機会があったのですが、何度かこの「国際すわりこみ映画祭」のことを「国際ロクデナシ映画祭」と言っていて、詩人だし、敢えてそういっているのか、それともただの言い間違いなのか判断がつきかね、面白かったです。

さて、そのあとはブライアンの上映。
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上映後、休憩を挟んでシンポジウムが始まりました。「立ち上がれ、そして座り込め!」というテーマでユニオンエクスタシーのお二人と、アクティビストの遠藤礼子さん、そして私の4人で、座り込みの意味、その思想と実践について徹底討論する!というものです。

遠藤さんにお会いするのは初めてでした。遠藤さんは立命館大学の元非常勤講師で、雇い止めに遭い、2007年7月に立命館大学の構内で4日間のハンストカフェを行ったそうです。ユニオンエクスタシーのお二人も、この時の遠藤さんの行動に強い影響を受け、ユニオンを結成したときに、スト=カフェと思いついたのだとか。

遠藤さんのハンストカフェの様子がYouTubeで観られます。
http://www.youtube.com/watch?v=6DTXdAcYpdU

シンポジウムの様子(左から遠藤さん、私、小川さん、井上さん)
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座り込みについて、会場の方から「我慢比べなのか?」という質問がありました。最初から意図せずとも、座り込みを始めた時点で、もしくは無期限ストライキという方針を決めた時点で、活動は長期化しがちです。よって我慢比べという側面はあります。それだけでなく、座り込みには多分に”相手に対する嫌がらせ”という側面もあります。(遠藤さんの場合、ハンストカフェをやることで雇い止めが撤回されるという期待はもともとしていなかったそうです。それよりも、ハンストカフェという行為によってその問題を広く知らしめること、大学当局への嫌がらせという目的のほうが強かった。)

ブライアン同様、ユニオンエクスタシーも「働け」とか「ハローワークへ行け」という野次があったそうです。また、京都大学のシンボルである時計台とクスノキの下でカフェをやっていた頃は、「記念写真を撮りたいからどいてくれ」と言われたこともあるそうです。ブライアンの場合、そう言って来る人たちに対して(時にはサポーターにも)、容赦なく怒鳴り散らしますが、それで支持を失っている部分もあるという話をしました。私が撮影をしていた時点でのパーラメント・スクエアの状況と現在のそれはかなり違うのです・・・。

座り込みは大変だろうけれど、だからと言って公共の場所にわざわざいることを選んだのだから、(大学当局や警察など戦う相手以外の)一般人やサポーターに対して怒鳴りつけるのは、どんな理由があってもなかなか同情されにくいと、私は思います。その点、ユニオンエクスタシーの二人は、何か言われても”暖簾に腕押し”状態で受け流しているそうなので、(そのほうがずっと良い!)と思いました。

座り込みを続けることで、自分のこれまでの生活は大きく変わります。小川さんは、「数年かけて育てたぬか床がダメになってしまった」と嘆いていました。確かに、毎日かき回さなければならないぬか床は、生活のペースが安定していることの象徴と言えるでしょう。自分だけでなく、自分に関わる周りの人への影響も大きいです。家族、友人、恋人・・・。「外泊」の中でも描かれるように、家族や社会とのつながりが”座り込み”という行為によって大きく変わってしまうのです。これに対して、ユニオンエクスタシーのお二人は「どうやって自分や周りの人への負担を減らしながら持続可能な活動をしていくべきか?」と言っていました。

私はこのシンポジウムに、”座り込みを記録した人”として呼ばれました。私以外の三人は、ハンスト、座り込みを体験した、いわば当事者です。それに対して、私は観察者という立場。シンポジウムは座り込みを含む非暴力直接行動の可能性を探るというものでしたから、観察者としての立場から、ある程度の客観性や冷静な意見を発することを期待されていたかもしれません。

しかし、私の発言や想いは、観察者としての冷静さは全くと言っていいほどなかったように思います。座り込み当事者の迷いや周りへの気遣いは分かります。でも、ハンストや座り込みなど、そんなすごいレベルのことをし始めてしまった人、やり始めてしまった人には、それが不本意だったとしても、ある程度割り切って堂々とやってほしいのです。泣き寝入りせずに、私たちの代弁者として立ち上がってくれたのだから、あとの生活面などのモロモロは(←こういっている時点で、私は理想のほうに重きを置いてしまっているのですが)周りがサポートするから! 勇気を出して立ち上がった人たちの決意を無駄にしたくない!そういう気持ちがあります。

私は座り込みこそ主体となってはやったことはありませんが、座り込みを取材し続けることで、私のほうにも予期せぬ大きな生活の変化がありました。まず一番大きなことは、座り込みを取材し続けるために、仕事を辞めたこと(仕事を1年間休職して留学していたので、帰国後は復職する予定でした)。そして、イギリス滞在期間が二倍に延びたので途中でお金がなくなってしまい、残り半年の撮影&編集作業はイギリス人家庭に居候しながら行いました。今も日本で居候中ですcoldsweats01。この先どうなるかも分からないし・・・。ってことで、状況としては、長期で座り込みをしている人と同様のことが私にも起こっているわけです。

よって、”座り込みのどこが悪い!”的に開き直った私の発言は、ある意味同じような状況に置かれている自分への言い逃れであるかもしれません。とにかく、自分の気持ちがあまりに主観的であることに、ずいぶん驚きました。

1時間半という予定をずいぶんオーバーしてシンポジウムは終わりました。外へ出ると雨がかなり強く降っていました。みんなでくびくびカフェに移動します。夜はくびくびで「外泊」と「ブライアン」を再上映するとのことで、ぜひ最後まで一緒にいたかったのですが、この日はこの後に岡山に行くことになっていて、お暇することにしました。

くびくびカフェでの上映の様子
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ユニオンエクスタシーは現在、大学当局に対し「地位確認訴訟」を起こしています。訴訟内容についての概要は下記ブログにて。裁判の行方に注目したいと思います!! 裁判傍聴など行ける方は是非行って、関心を示しましょう!!
http://extasy07.exblog.jp/11526561/

小川さん、井上さん、遠藤さん、そして映画・シンポジウムに来ていただいた皆様、どうもありがとうございました。

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