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完成で燃え尽きない(上映会報告2009/11/23)

当初の予定では、19時ごろに京都大学を出るつもりでしたが、シンポジウムが盛り上がったこともあり、予定より1時間遅れて大学を出ました。結構大振りな雨で、時間がなかったので、私にしては珍しくタクシーで出町柳駅まで向かいました。途中、岡山映画祭スタッフの川端さんから電話をいただきました。私の岡山映画祭での上映は翌日でしたが、この日の夜は、スタッフの皆さんと、小林茂監督(「チョコラ」)、三浦淳子監督(「空とコムローイ」)を交えて交流会をすると聞いていたので、それに参加したいと言っていたのです。それで、何時に岡山に着く予定かと、川端さんが電話をくれたのでした。

その時は京都大学を出たばかりで、京都駅までは乗り換えも含めて大体30分ぐらいかかるだろうと思いました。京都から岡山までは新幹線で約1時間。スムーズに行ったとしても、着くのは9時半過ぎになってしまいます。6時から宴会は始まっていて、スタッフの方たちは翌朝も早くから映画祭の準備をするということだったので(しかも映画祭自体の会期が長く、14日から開催しているのです!)、もし遅くなりすぎるようなら解散して構いませんと伝えました。一応、私は京都駅についてはっきりと何時に岡山に到着するかが分かった時点でまた電話します、と言いました。もちろん交流会に参加したいですが、でも、あまりに遅すぎです。

出町柳に到着すると、10分ぐらいで特急が来るとのことでした。タイミングが良くてラッキーと思って電車に乗り込んだのですが、停車駅をよく確認せず(「東福寺駅」はJR乗り換えの駅なのだから全ての電車が止まるだろうと勝手に思っていたのです)、特急電車は無情にも東福寺駅を通り越し、10分近く走り続けるのでした。

結局次に止まった駅で下車し、だいぶ遠回りして京都駅へ到着しました。既に9時を回っています。次の岡山行きの新幹線は15分後。これでは岡山到着は10時15分になってしまう。かなりの遅刻です。駅から川端さんに電話をし、謝りました。宴会はお開きになるけれども、映画祭代表の小川さんが待っててくださるということでした。新幹線に乗ったとたん、眠気が襲ってきたのですが、ここで寝たら大変!と、ずっと起きていました。

岡山駅に到着して、新幹線の改札出口で小川さんとお会いしました。日曜日ということで早めに閉まる店が多く、今日交流会をやっていたというスペイン料理のお店に戻ることにしました。既に11時近くになっていましたが、私は到着したとたんなんだかお腹がすいてきて、結構食べましたcoldsweats01
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岡山映画祭のスタッフの皆さんは、お仕事などと掛け持ちをしながらボランティアで運営されているそうです。小川さんもNPOセンターで理事を務めてながら、映画祭の代表をされています。映画に大変詳しく(でなければ映画祭を立ち上げないのかもしれませんが)、映画制作者との親交もあり、映画作りにプロデューサーとしても関わってきたそうです。中でも、私が(こんなドキュメンタリーがあったのか!)と衝撃を受けた映画、「ゆきゆきて神軍」(原一男監督)にも関わり、山陰方面での撮影中は、原監督は小川さんの自宅に泊まっていたのだとか! 主人公である奥崎謙三さんとも面識があり、奥崎さんが元中隊長宅で長男に発砲した罪で服役し、刑期を終えて出所したときには、奥崎さん本人から小川さんに「紅白まんじゅう」が届いたそうです!!

「ゆきゆきて神軍」の映画の中では、奥崎さんが服役したというところで終わっていますので、その後がどうなったのか私は知りませんでした。小川さんによると、出所後はピンク映画などにも出演していたとのこと! 入院していた病院では看護婦さんを困らせていたとかで、やはり最後まですごい人なんだな~と思ってしまいました。ちなみに、撮影現場以外の奥崎さんはとても礼儀正しい人だったそうです。小川さんは彼の怒ったところを見た事はなかったとか(映画で観る限り、キレたら相当怖そうですよね・・・!)。

色んなお話をしていたら、気がついたら12時半を過ぎていて、小川さんにホテルまで送っていただきました。ホテルから映画祭会場へは徒歩2分ほどと聞き、明日の予定を話してお別れしました。

ホテルの部屋
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ホテル外観(翌朝撮影)
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朝9時ごろに起きて朝食をとり、10時にチェックアウトして映画祭会場へ向かいました。オリエント美術館の地下が会場です。

オリエント美術館
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会場の様子
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物販コーナー
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朝一番の作品、「小梅姐さん」を観ました。監督の山本眸古さんとは、福岡のモツ鍋屋さんで一緒に飲む機会がありましたが、作品をまだ観れていなかったので、今回観ることが出来てよかったです。小梅姐さんという存在を私は知らなかったのですが、彼女が発掘した地方の民謡、彼女の歌声は、民謡オンチの私でも知っているほど有名なものばかりでした。

受付では、映画祭側でスチール写真や上映用素材のやりとりなどを担当してくださった川端さんと初めてお会いすることが出来ました。これまで何度かメールや電話のやり取りはあったのですが、川端さんもイギリスに留学経験があり、映画を作っているということは全く知りませんでした。川端さんと、同じく映画祭スタッフの富田さんと一緒にお昼ご飯を食べに行くことになりました。

オリエント美術館から歩いて5分ほどのところにある「花食」へ。
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緑に溢れた庭があり、店内は天井も高く、ガラス張りで光が沢山差し込んできます。まるで温室にいるような雰囲気。いかにも女の子が好みそうなカフェっぽいつくりですが、夜は家庭の味を求めるサラリーマンたちで溢れるそうです。

メニューは健康志向。かなりボリュームがあったのと、話に夢中になりすぎて完食できませんでした。
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ご飯を食べながら、話題は川端さんの映画についての話になりました。イギリスに留学し、ロンドンで映画作りを学んだそうです。映画作りのキャリアは既に10年以上(19年ぐらい?と言っていたと思います)で、フィクションの作品をこれまでに7~8本作ったのだとか。もうしばらくしたら、新作の撮影に取り掛かるそうです。

私は「なんていう作品なんですか?」、「どこで観られるのですか?」、「どういうところで上映されているんですか?」と、矢継ぎ早に聞いてしまいました。フィクションであれ、ノンフィクションであれ、映画を1本作るというのは相当なエネルギーの要ることです。それが8本もあるなんて! 特集上映ができるじゃないですか!!

川端さんは、映画が完成する頃にはエネルギーを全て使い果たしてしまって、上映のために動く気力が残っていない、と言っていました。なので、これまでの作品は、主に関係者を中心に上映をしたり、DVDを配ったり、そういう発表形式が中心だったとのこと。ウェブサイトも特に持っていない、と言っていました。私が自分の作品を上映してもらいたいと岡山映画祭に連絡したときに(頑張って売り込んでるな~)と感心したのだそうです。

・・・なんと勿体無い・・・!!!!

作り終えた時点で、製作に全てのエネルギーを注ぎ込んで燃え尽きてしまうのは分かりますが、上映するための努力をしなかったら、製作につぎ込んだエネルギーが浮かばれないのではないかと思うのです。商業映画ならば、監督は製作だけに集中して、完成したら配給は配給会社に任せればよいですが、自主制作の映画は、宣伝も自分がやらなければ、なかなか人の目には留まりません・・・。それでなくとも、商業ベースの映画でも苦戦している近頃の映画業界で、ましてや自分のような無名の自主制作監督、しかも新人の映画を誰が気に留めてくれるでしょうか? それは限りなくゼロに近い。私はその大前提に立っています。だからこそ、製作以上に宣伝にも力を入れる。自主制作でもプロデューサーをつけているなら別ですが、そうでなければ自主制作作品の上映は、監督は製作だけでなく、プロデューサーもやる、そうしなければかなり難しいと思います。

とは言っても、製作と宣伝は、かなり性格の異なるもの。宣伝はいわば営業。映画制作を含むモノづくり全般に携わる人は、営業が苦手というタイプの人も多いです。しかも、努力すればするほど、その結果が目に見えて報われる製作と違い、宣伝はいくらやってもきりがないし、効果もよく分からない分野です。製作とは性質の異なる大変な作業。(宣伝しなきゃ!)と思っている私でさえも、会う人ごとに映画の宣伝をして回る勇気はない・・・。

しかし、前述したように自主製作者は、製作から上映まで自分でやるのですから、アーティストとしての側面と、営業マンとしての側面、そして社会人的な交渉力、社会常識なども兼ね備えていなければなりません。特にこの”社会常識”については三人で「必要だよね~!」という結論に至りました。まず、”挨拶が出来る”、”メールにちゃんと返信する”とか。普通そうなことに見えて、実は皆がしているとは限らないんですcatface!!

とりあえず、川端さんにはまず作品のウェブサイトを持っていただきたいと思いますhappy01!!!作品を観られるのが楽しみです!

フィクションの映画作りについても聞きました。ドキュメンタリー映画では、製作過程の中で”編集”が鍵で、それによって作品の出来がかなり左右されますが、川端さんはフィクションの場合、編集作業はそんなに大変ではないと言っていました。もともと企画したとおりの絵が撮れてさえいれば、それをつないでいくのが編集作業なのだから、と。フィクションでは、一番大切なのは、台本とスケジューリングだそうです。台本がしっかりしていれば、撮影も進行もうまく行く。でも台本をきちんと練っていないと、後で大変なことになる・・・。

スケジューリングについては、ロケ地の設定、移動、スタッフの確保、天気、役者など、予定と、現場での監督の”決断”というものがとても重要になってきます。例えば屋外で撮影していて、段々雲行きが怪しくなってきたとします。でも、ちょっと無理して決めたところまで撮影してからお昼を食べるのか、それとも、スタッフの士気が下がってきたので、ここで一端お昼を食べることにするのか・・・などなど、大小さまざまな”決断”が監督に求められます。うーーーん、聞いているだけで大変そう! 私なんてドキュメンタリーでしたから、”決断”ってそんなになかったような気がします。もちろん、撮影現場での”判断”はありますけど、基本は被写体の都合や意志で動いているので、こちらがコントロールできる部分が少ないからです。

フィクションの場合、役者さんの確保も重要です。撮影が1年とかの長期に及ぶ場合、最後まで付き合える人かどうか。もし途中でやめられてしまっては、それがメインの登場人物だった場合、その損害は甚大です。役者選びの際のポイントは、ちょっと演技が出来るとか、そういう基準ではなく、”信頼できる人”というのが大切だそうです。

これから撮りかかるという新作が楽しみです!!

お昼を食べ終え、オリエント美術館へ戻りました。いよいよブライアンの上映です。今回、映画の中に登場する日本人のご一行様の中に、岡山に住んでいる女性がいてお誘いしたのですが、上映の日はあいにく海外に出かけているということで、来られませんでした。

川端さんの挨拶
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上映の様子
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上映の後は上之町会館でのトークを予定していましたが、人数が少なかったこともあり、喫茶店かどこかで囲む会をしましょう、ということになりました。歩いて5分ほどのところにあるカフェに行きました。
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カフェでは、スタッフの方、映画を観てくださった方々とお話をしました。ブライアンについて(子どもは? 生活は? 収入は?など)や、私自身についてなども質問がありました。作品についての話も面白かったですが、特に”ドキュメンタリー映画を作ることの難しさ”についての話題が興味深かったです。

映画を作った後に、被写体の人からクレームがきた場合にどうするか、という話になりました。私は今のところ幸いにもそういう事態はありませんが、この先起こらない保証はありません。例えば、センシティブなテーマを取り扱っている場合、取材時に被写体の人がOKしてくれたとしても、後で(やっぱり嫌だ)と気が変わることもあるでしょうし、そうでなくても、完成品を観て(自分の本意と違う!)と上映中止を求める人もいるでしょう。インタビューなどの場合、インタビュー内容が最初から最後まで使われることのほうが稀ですから、大抵は大幅に編集されます。編集されて、本人の言いたいことが凝縮されたなら良いですが、前後の文脈抜きに一部だけ使われるのでは、ニュアンスが違ってしまうということもあるでしょう。

そうなった場合、どうするか? これは本当に判断の難しいところです。例えば「ここはオフレコで」と言われた部分を勝手に使ってしまうというようなことはあってはならないと思いますが、被写体の人に100%満足してもらえる映像なんてコマーシャルでない限り、まずありえないのですから・・・。

私はまだ経験が浅いですが、キーになるのは被写体の人との信頼関係ではないかなと思います。被取材者の生き方や主張に共感する・しないは別として、取材対象者に尊敬の念を持って取材・編集する。その尊敬の気持ちがあれば、被写体の人にとって辛い日常などを交えて構成されていたとしても、こちらの製作意図を納得してもらえる可能性が高いのではないかと思います。・・・なかなか難しいですが・・・

例外としては、例えば不正を図る権力者などや、批判されるべき公的な人物に関しては、正面からの取材に応じてもらえることが少ないので、ある程度強行的な取材も許されるべきだし、彼らがオフレコとしたい情報も、それが国民の生活に関わる重大なことと判断すれば、使うことも大いにありえると思っていますが、対一般人に関しては、やはり相当慎重に対応しなければならないと思います。

被写体となる個人が、その個人の辛い体験などを、世間にその問題を認識してもらうために晒しても良いという決意・覚悟を持っているならば、その体験を取材して公表することはいいですが、そうでない限り、個人の人生を踏みにじってまでその人を晒してよいのか??とも思います。この問題は、ドキュメンタリーを作る限りついて回るので、私も常に意識しておかなければなりません。

カフェで記念撮影
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カフェを出た後は、スタッフの方々と居酒屋へ行きました。
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岡山名物は「サヨリの刺身」と聞きましたが、この日は連休の最終日で、サヨリの入荷がないということでした。次回また岡山に来られる機会があれば、ぜひ食べてみたいです。
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食事をしながら、話は「監督トーク」の話題になりました。映画祭では、監督トークの際に、スタッフの方が質問をします。基本的な質問と言えば、「どういうキッカケでこの作品を作りましたか?」とか「次回作はなんですか?」と言ったものが挙げられますが、そういうことを聞くと、監督の中には「いつも聞かれてるんだけどね・・・」と言いながら話したりする人もいて、そういわれたりするとスタッフの側としてはちょっとガッカリするようです。

その気持ち、良く分かりますが、まだトークの経験が浅い私からすると、初めて映画を見るお客さんたちが知りたいことというのは共通してありますし、どこでも聞かれる基本的な質問でも、監督が何度も答えるうちに話す内容が磨かれていくと思うのです。答えてみて、お客さんの反応を見て(あ、あんまり伝わってなかったな)と思うと、次回は説明の仕方を変えたりするわけです。なので、私は同じ質問を聞かれることに対して(また~?)とは全然思いませんし、勉強になるとさえ思っています。基本的な質問を一通りした上で、あとは会場のお客さんに合わせた質問をするとか、質問者の個性を入れたひねった質問とかがあるのが、良いかもしれません。(答える側としては、アドリブに対応することが求められますがwink)。これはドキュメンタリーにおけるインタビューも同じだと思います。質問する側もされる側も、なかなかこれはテクニックのいることですが・・・!

そんなことを話しているうちに8時過ぎとなり、東京へ戻る夜行高速バスの時間となりました。スタッフのおかさんに高速バスの駐車場まで送っていただいて、無事バスに乗れました。

居酒屋で記念撮影
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岡山映画祭のスタッフの皆様、映画を見に来ていただいた皆様、ありがとうございました!

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