« 公園のベンチが人を排除する? 不便に進化するホームレス排除の仕掛け | トップページ | [jp] 映画『ブライアンと仲間たち』 その後のパーラメント・スクエア »

[jp] インタビューで苦戦

昨日と今日も、相変わらず撮影した素材を見返す日々でした。昨日観たテープの書き取りは、ある住民の方のロングインタビューだったのですが、ずいぶん楽な作業でした。

・・・と書くと、まるで良いことのように聞こえるかもしれませんが、実はとても悪いこと。なぜなら、インタビューにもかかわらず、書き留める内容がそんなにない=映画本編で使えるものがあまりない=実のあるインタビューではなかった、ということなのですから。

その人は、住民の会の中でも割と中心的存在で、住宅問題にとても関心を持って勉強もされ、話も理路整然とした理論派。これまで学生運動から労働組合の運動まで、さまざまな活動をされてきました。

インタビューは午後2時から始めました。インタビューの日時を決めるときは、私はもちろん相手に合わせるのですが、2時というのはインタビューのゴールデンタイム。午前中ではあわただしいし、午後1時ではお昼ご飯を食べた直後だし、ということで、良く2時に設定されます。(打ち合わせとかもそういうことが多いですよね?)

よって2時にその方の家に伺ったのですが、インタビューが終わったのは夜10時!!!! 夕食をいただいた時間を除いても7時間近くインタビューをさせていただいていたのです!

私はインタビューをするときに、特に「こうしてください」とか、ましては「ここから歩いてみてください」とか、そういったことは一切しません。自由に話してもらいつつ、例えば、(ここはもうちょっと話してもらいたかったな)とか思ったら、先の話題に進んだときに、またさりげなくその話題を振ったりして、いわゆる”私がほしいものや言葉”を集めるべく、会話を進めて行きます。

短時間で制作するニュース番組などと違って、被写体とじっくりと向き合えるのが自主制作のよさなのですから、こちらが欲しいものを急いで手に入れたいばかりに、「こうして」なんて言いたくない、そういう気持ちがあります。

インタビュー慣れしていない人は、話があちこちに飛んだり、うまくまとめられないこともありますが、それも当たり前のことなので、インタビューの中で、例えば”まとめ”、”確認”的に何度かたずねたりして、だんだんとコンパクトに話してもらえるようにしたりとか。とにかく、こちらから最初にこうしてくれと言ったりしたら、その人の内面から出てくるものを奪ってしまうと思うのです。

そんなわけで、インタビューを始めて、最初のうちは(う~~~ん、こういう風に話してくれないかなぁ)とかも正直思ったりすることがあるのですが、それは1時間も話していれば、だんだんインタビューに慣れてきて、お互いにとってやりやすい形に自然に変わっていくというのをこれまでの経験上から分かっているので、あえて何も言わないというのが私の方針です。カメラの前では自分を良く見せたい、良いことを言いたいと思うのも自然な気持ちですが、でも、それもお互いがリラックスして長時間話していくと、だんだんどうでも良く(?!)なってきて、自然になっていきます。撮影させてもらう側としては、取り繕った姿ではなく、本音で語ってもらいたいので、そのほうが良いです。

この日も、そのような信条の元にインタビューを始めました。しかし、1時間、2時間、そして3時間とたっても、一向にその人自身の言葉で語られるものが出てこないのです!

とにかくたくさんの本を読んで知識を固めている人なので、インタビュアーである私を”客観的な事実”や”知識人も認めている見解”などで説得しなければと思っているようなのです。だから、何か話すときも「有名な経済学者の○○が・・・」とか、「この本にも書かれているように・・・」と、専門家の著書の引用で話すのです。

そして、何かの質問をすると、その大元となる背景から話し始めます。そうしないと、私にちゃんと伝わらないと思う気持ちからかと思います。大元となる背景から話すのは悪いことではないのですが、これの悪いところは大元となる部分で一生懸命話してだいぶ時間がたち(質問に直結する話にたどり着くまでに30分以上かかったりしました)、やっと質問にたどり着いたときにはもうくたびれて、ずいぶん説明し尽くした気分になってしまうのです。でも実際は、肝心な質問に対して不十分な回答しかしていない。それならば、あまり大元にさかのぼりすぎずに、ある程度質問に対してストレートに答えたほうがよっぽどいいと思います。

また、話すときに紙に相関図的なものを書いて説明することも良くありました。「こういう団体があって、ここと対立していて・・・」というような。それも、普段の日常会話ならば、ずいぶん役に立つと思いますが、インタビューではマイナスでしかありません。紙に書くことで、本人の顔が下に向いてしまう。また、紙で説明をしている分、言葉での説明が不十分となり、画面にその乱雑に書いた紙を大写しにするわけにもいかないので、結局画面でその人の顔と声だけを聞く観衆には分からない・・・。

7時間のインタビューを終え、ぐったりして家に帰った私でしたが、質問として用意していった紙の3分の一も聞けずに(どうしよう・・・)と思いました。その方からは「今日だけじゃ話し足りないよね。続きはまた今度話す」と言ってくださったのですが、私としては回数や時間の問題ではなく、この映像は使えない、と思いました。またインタビューをやったとしてもこんな調子だったら、何回やっても無理だとさえ思いました。

何でこんな風になっちゃうんだろう?と考えました。彼が一生懸命権威や紙を使って私に説明する根底には、自分の思っていることの正しさを私にも理解して欲しい、という気持ちがあるのか・・・などなど、いろいろ考えてしまいました。

この推測は間違っているのかもしれませんが、でも、私が彼(問わず誰にでも)インタビューをするのは、”正しさ”や”正解”、”正論”が欲しいからではないのです。その問題の当事者である人が、客観や常識とは無関係に、何を考えているのか、どんな思いでいるのかを聞きたいからインタビューさせてもらっているのです。正論や専門知識が欲しいなら、それはその道の専門家から聞きます。(←その専門家の言っていることが正しいかはまた別問題ですが)。だから、どこにでもあるようなありふれた正論で自分を理論武装して欲しくない。でも、これまでの彼の経験(運動)が、相手を論破するためにそのように武装させるようにしてしまったのだろうか・・・。

また、インタビューのときに奥さんが同席していたというのも、鎧が取れない理由のひとつかも、と思いました。インタビューをされる(言ってしまえば、裸にされるような気分でもあります)のに、恥ずかしい自分は見せたくないという感じ・・・?

そんなわけで、私として(今までの自分のやり方のままではダメ)と思い、どうやったらその人のインタビューがうまくいくのかをその後1ヶ月近くかけて考えていました。

その結果、私が思いついた条件は下記。これらを紙に書いてもっていき、再度のインタビューの開始時に「今日はこのルールでやってみませんか?」と提案したのです。提案する前、こんなことを提案して良いものだろうかと散々悩みました。その人のやり方というものを本来尊重するべきなのではないか、と。でも、前回の繰り返しになってしまったら、結局映像自体を使わないことになる(私も使用する映像に妥協したくないですから)。それはもっと失礼だと思い、提案してみることに決めました。これがうまく働くかは分からないけれど・・・。

(実際の紙は実物が手元にありますが、名前なども書いてあるのでここには載せません。でも、この話自体はナイショではなく、お互いに笑い話として話したりします。「あの時こんな風だったよね」と)

★自分の言葉で話す。
学説や本の引用、紹介よりも、ご自分の考え・言葉で話していただきたいです。

★紙に書いて説明をしない。
映像では使えません。

★あまりさかのぼって説明しすぎない。
本題に到達する前に疲れて、説明した気分になってしまいます。

ご本人も苦笑いしつつ同意してくれて、再度のインタビューをしました。インタビューの間中、ルールを大きく書いた紙は、見えるようにテーブルに置いた状態で! そのときは、奥さんの同席は無しということで、サシで2時間、前回に比べたら時間は短いですが、内容の濃い、すばらしいインタビューが出来ました!!!

でも、成功した秘訣は私の工夫というより、その方の協力と柔軟性だと思います。本当に理論武装が染み付いてしまった人ならば、30歳以上も年の離れた他人からこんな提案をされて怒ったかもしれません。でも、提案を快く受け入れてもらい、お互いに新しいやり方にチャレンジしてみたのですから。

また、その間に1ヶ月以上間があったことで、その間しょっちゅう住民の方たちと会っていたので、お互いに良く知るようになったというのもあるかもしれません。

・・・でも、2回目のインタビューのときに、(あ、この人私が欲しい言葉を分かってる・・・!?)と一瞬思った瞬間があり、こちらが欲しいものの意図を悟られるのもまずいとも思いました。それはそれでまた、その人個人の考えと外れてきてしまいますからね。その人がある言葉をつぶやいて、私が(おっ)と思った表情・反応を、(ここは映画で使うでしょ?)という表情でその人が私を見たのです!!!! あれには参ったなぁ!!

とにかくインタビューは難しいです。これは試行錯誤してやり続けることでしか、上達の道はないのでしょうが・・・。

|

« 公園のベンチが人を排除する? 不便に進化するホームレス排除の仕掛け | トップページ | [jp] 映画『ブライアンと仲間たち』 その後のパーラメント・スクエア »

新作制作状況」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 公園のベンチが人を排除する? 不便に進化するホームレス排除の仕掛け | トップページ | [jp] 映画『ブライアンと仲間たち』 その後のパーラメント・スクエア »