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[jp] どうやら深みにはまったらしい

昨日、「さようならUR」英語字幕のネイティブチェックを担当してくれている、イギリスのポールにスカイプで進捗状況を聞きました。当初の予定として、「大体2週間ぐらいでお願いします」と伝えてあり、本人も字幕翻訳のエクセルをざっと見たときは「2週間あれば大丈夫」といっていたのですが、昨日様子を聞いていたら、なかなか苦戦しているようでした。

翻訳というと、インターネットの翻訳機能(精度は低いですが)もあるぐらいなので、機械的にある言語を他の言語に置き換える作業と思う人もいるかもしれませんが、実際は、翻訳に携わる当事者の理解度(言語的なもの+描かれている内容的なもの+さらにはその国の文化・歴史に対する理解)、そしてその人の語学センス(単にネイティブというだけではダメ)などが大きく関わる、人為的なものなのです。

私自身、何度が字幕翻訳をしたことがありますが、そのときに思ったことは、字幕翻訳というのは、簡単な筋書きだけが与えられているようなものであって、自分でそれをもとに脚本を書くような作業である!とさえ思ったのです。それぐらい解釈に幅があり、表現は無限大(良くも悪くも)な世界なのでした。

ポールが特に混乱していたのは、発言の内容自体はかなり怒っていて、強い批判を含むシーンなのに、その発言をしている本人の表情や声のトーンがそれとはそぐわないと思うときがある、というもの。確かに、これは判断が難しい。それに、もしかして、文化的な違いの差で、イギリスだったらこんな言葉を発するときは激高したときだけだけれども、日本では必ずしもそうではない、というような原因もあるかもしれない。英語で言うところの「Swear words」(ののしり言葉)が、日本語で該当する表現を探すのが結構難しいのと同様に。

発言している本人が穏やかそうに見えて、結構過激な発言をさせることで、逆に皮肉をこめた発言の演出というようにも出来るかもしれないし、違和感があるなら、発言の真意は変えないままもう少しソフトな言い回しに変更するのも良いかもしれません。このあたりのさじ加減やアレンジは、まさに翻訳者の腕にかかっています!

というわけで、最初はスンナリ行く予定だったネイティブチェック作業、けっこう深みにはまってしまったみたいです。

映画の中で、住民の一人が入居したての頃に撮影した写真を持って、近くの山に登るシーンがあるのですが、そこで彼が写真を見ながら息子の小さな頃を懐かしがるシーンがあります。「俺が散髪していたんだけど、なかなか前髪がそろわなくて、どんどん切っていったらこんなになっちゃった」という台詞があります。

「前髪をそろえる」って、英語でなんと表現するかが分からなくて、オンライン辞書で調べたら、「前髪を目の上で真っすぐそろえる=keep one's bangs straight above one's eyes」と載っていたのでそのとおりに書いたら、ポールから「bangsって何?」と聞かれました。

(えぇっ、だってこれ辞書に載ってたよ!)と戸惑った私は、見つけたオンライン辞書のリンクを送り、さらにfringe of hairだと言っても「え~、聞いたことない」ですって!! あれこれ調べたら、これはアメリカ英語なのでした。(イギリスでも、女性にはある程度浸透している言葉のようです)

”英語”字幕をつくる場合、「アメリカ英語」にするのか「イギリス英語」にするのかも迷うところです。発音の違いだけでなく、単語自体も両者はかなり違うのです。今回はイギリス人にネイティブチェックしてもらうので、イギリス英語としましたが、これが例えばアメリカでの公開を意識した映画を作っている人だったら、それはアメリカ英語にした方が良いでしょう。

イギリス人でも、自分が使っている言葉は「イギリス英語」なのか、それとも、「元はアメリカ英語だけど、今はイギリスでもずいぶん浸透している言葉」なのか、違いを認識した上で使っているか?ときいてみたところ「そうだ」と言っていました。そして「これはアメリカでは通用しないだろうな」というような「超・イギリス英語」についても認識している、とも。

なので私は基本はイギリス英語としつつも、イギリスでしか通用しないような単語は避け、ユニバーサルな単語を使ってほしいとお願いしました。

このイギリス英語、アメリカ英語の違いは、アメリカ人はそんなに気にしませんが、イギリス人のこだわりは相当なものがあります。私がロンドンで通っていた英語学校の先生も、生徒がアメリカ英語の発音をすると、(わざと)飛び上がって”悪魔祓い”ぐらいの勢いで厳重注意していましたからcoldsweats01

BBCのサイトで、イギリスに侵入したアメリカ英語のトップ50という記事が載っていました。なんと、前髪「bangs」についてもランクインされています!

日本でもおなじみの「ショッピング・カート」(日本で浸透しているカタカナ英語は圧倒的にアメリカ英語由来のものが多いですよね)は、イギリス英語では「Shopping trolly」。トロリーって、なんかイギリス英語は古めかしい単語が多いですが、イギリス人曰く「”Shopping cart”なんて単語を使うのは、Amazonで買い物するときぐらい」とのことですcatface

なかなか奥の深い英語の世界でした。

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