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[jp] 縮む、団地

昨日は、藤沢市労働会館で上映会でした。この上映会を企画、準備してくださった一人、藤沢市辻堂団地にお住まいの竹内さんに初めて連絡をいただいたとき、辻堂団地で起こっている団地の集約化についてお話を聞き、私は上映会に伺う際にぜひ辻堂団地を見学させてほしいとお願いしました。

高幡台団地の住民4人と私で上映会に行くことになっていたので、電車ではなく、車で行こうという話になりました。電車でも日野から藤沢は遠いですが、車は渋滞もあるのでどのくらいかかるのか分かりません。上映会は午後からでしたが、急遽団地の見学も加わったので、朝7時に出発することになりました!

途中、案の定渋滞もあり、約3時間かかって辻堂団地に到着。竹内さんが軽快に自転車に乗って現れ、団地を案内してくれました。

「集約化」というのは、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、団地の削減、取り壊しのことです。2007年年末に内閣の閣議決定で(つまり政府の方針として)UR賃貸住宅の削減、民営化方針が決まった際、不採算部門の整理のために古い団地について、建て替えをせずに取り壊していくことになりました。「集約」には、取り壊して更地にし、民間に売却するという団地もあれば、取り壊して、一部を戻り住居として建て替える(でも全体の総数は減る)という団地もあります。いずれにせよ、このような方法で団地の総数を減らすことを「集約」と呼んでいます。

昭和39年に入居を開始した辻堂団地は、1900戸もある大型の団地です。この団地は集約により600戸を取り壊すことになっているそうです。建て替えはせず、取り壊すだけ。取り壊さないで残すとなった団地は、外壁が塗り替えられたということで、どの団地が壊され、どの団地が残るのかは一目瞭然です。

黄色っぽい壁の建物は取り壊し対象。白い壁の建物は残される。
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取り壊される建物。
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残されることになった建物
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移転期限は今年の10月なので、後2ヶ月あまりですが、まだ結構住んでいます。しかし、高幡台団地73号棟と大きく違うのは、取り壊し予定の団地に住む全住民が転居に同意しているということです。
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道路を隔てただけで、残される建物、壊される建物が分かれているのは不思議な感じがします。いずれも同じ時期に建てられた建物なのに。
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残されることになった建物は、外壁の塗りなおしのみなので、改修工事などは行われていません。ここに約50年暮らす竹内さんは、今回運よく取り壊し対象を免れましたが、築50年近くの建物なので、いつ取り壊しの対象になるか分からない、ここもいずれは削減されるのかもしれない、と話していました。(竹内さんは、やがて起こるだろう立ち退きに備えて、「辻堂団地に住み続ける会」を結成され、世話人代表をされています!)

外壁の塗り直しがされたとはいえ、自転車置き場の屋根の内側は何もされていないようです。かなり痛んでいる様子がわかります。
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何棟かは、新たにエレベーターが設置されているところもありました。しかし、渡り廊下なくエレベーターを取り付けても、その恩恵に授かる世帯はとても少ないです。果たして費用対効果はいかがなものか・・・
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しかも、このエレベーターの場合は、ベランダ側に取り付けられているため、防犯上エレベーターの乗り場も施錠され、鍵を開けて入るようになっています。
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竹内さんのお宅へお邪魔しました。
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海岸までとても近い辻堂団地。竹内さんのお宅にある”サンルーム”からは、海が見えるのです!!
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サンルームからの眺め。絶景です!!!! これは引っ越したくないよなぁ・・・!
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竹内さんの奥さん
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全住戸が移転に応じた辻堂団地ですが、移転の条件は高幡台73号棟と同じです(移転先の斡旋、移転費用の補助金額、移転期限2年間etc)。良く、「同じ団地内で移転できたら、環境もそんなに変わらないし、良かったね」と言う人もいます。それもそうかもしれませんが、これには大きな落とし穴もあるのです。

URは、移転を余儀なくされた人が、移転で大きく家賃が上がってしまうことがないように、同一のタイプのUR住宅へ移転される人に対し、家賃の減額措置を取っています。移転後10年間は、移転先の本来の家賃から20%を減額する(ただし移転前の家賃を下限とする)となっています。

なので、例えば、同じ建物に住み続けられた場合は、10年後でも家賃は通常の値上げがない限り変わりませんが、今回取り壊し対象の建物から移転してきた人は、10年後には家賃が上がってしまうのです(新規入居した場合と同じ家賃になってしまう)。これは、同じ団地に住み、同じ年月を暮してきた住民たちの間に、大きな不公平感を抱かせることとなるでしょう。

600戸もの住居が削減されるということは、団地内の商店にも大きな影響を与えます。高幡台団地の場合、73号棟の取り壊しが決まる前までは、1階部分の商店街はすべて営業していたそうです。でも、250戸(実際には200戸に人が住んでいた)が取り壊されるということで、病院、郵便局、美容院を除く全ての商店が、商売が立ち行かなくなるということで、廃業したのです。(もちろん店舗が入る73号棟自体が取り壊されるので廃業したという商店もありますが、でも例えばスーパーの場合、移転期限が過ぎても高幡台団地全体の住民のために営業を存続してくれることをUR、自治会ともに望んでいましたが、採算が合わないということで撤退してしまいました)。

その高幡台団地の3倍もの住居が削減されてしまう辻堂団地はどうなのでしょうか? 商店街にも連れて行っていただきました。

看板の半分は消え、シャッターを下ろしているお店が多い。
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一応、上に掲げた写真の建物の1階部分にある商店街は(閉めているところを除き)営業は存続なのですが、別の建物では立ち退きを迫られている商店もありました↓。
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昔ながらのお肉屋さん
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洋服屋さん。手書きのメッセージには「デパート行く前にお寄りください」の呼びかけが
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立ち退きについて、これからURが条件などを提示するそうですが、竹内さんは「長年ここで商売をしてきた商売人に移転しろというのは、その商売を止めろといっているのに等しい」と言っていました。

色々とお話を聞かせていただいているうちに、お昼になり、上映会場である労働会館に向かいました。司会進行役の矢野さん、その他の方にご挨拶してから、お昼ご飯を食べました。

上映、その後に竹内さんより住宅の貧困問題全般を網羅するお話があり、その後は会場の皆さんも交えて意見交換がありました。UR団地だけでなく、その他の賃貸住宅、借り上げ住宅、持ち家でも、それぞれに抱える悩みがあり、つくづく住宅問題が人生に占める割合の大きさを実感しました。
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イベントの後は、やきとり居酒屋で交流会。
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帰りの時間があるので、2時間ほどしかいられなく残念でしたが、年金組合の皆さんはとても明るくて、お話好きで、とても楽しかったです。

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この日は、藤沢に住んでいる私の大学時代の友人も観に来てくれました。5年ぶり(?)ぐらいの再会で、とてもうれしかったです! おいしそうなお菓子もいただきました。
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暑い中、辻堂団地を案内してくださった竹内さん、上映会を企画してくださった年金組合の皆さま、そして映画を観に来ていただいた皆さま、どうもありがとうございました!

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