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[jp] 熱心なお客さん

昨夜は都内某所にて、「さようならUR」の英語版上映会を行いました。ネット上で、私の映画を偶然見つけて興味を持った、イギリスの大学UCL(University College London)の建築を学ぶ学生さんから数週間前にメールをもらい、実現した上映会でした。

最初にメールをいただいたときは、この映画に興味があるが、ネットなどで観られるのかどうかという問い合わせでした。私はネット公開はしていないけれど、大学の授業とかで上映するのはどうか?と提案しました。

すると、大学のスタディーツアーの一環で、10月末から10日間の日程で、京都、伊勢、仙台、東京に滞在するので、そのときに上映会ができないかと言われました。学生19名、先生2名の大所帯で日本にやってくるとのこと。”建築”といっても、学生によってその興味・研究の対象は異なり、ある学生は、日本の伝統的な建築に関心を持ち、別の学生は大震災後の仙台でどのような被害を受け、その後の都市計画がどのように考えられているのかに関心を持ち、私に連絡をくれたキャサリンは公共住宅に興味があるとの事。なるほど、それで私の映画を見つけてくれたわけですね。

もちろんこれまでに面識はありませんでしたが、何度もメールをやり取りするうちに、”建築”を学びつつも、日本の社会状況に強い関心を持って、がんばって情報収集しているようでした。”Hikikomori”(引きこもり)や、”Invisible homeless”(ネットカフェなどで寝泊りする潜在的なホームレス状態の人)なども調べていて、やり取りするたびにメールがどんどん長くなっていって、大変ではありましたが、でも私も質問されたり説明するのは勉強にもなって面白かったです。

駅で待ち合わせをして上映会場へ。「さようならUR」を観る機会を逃していた加藤さんは、日本側の唯一の観客という状態にhappy01 上映の前に、私から少し自己紹介と、映画をなぜ作ろうと思ったか(私自身は建築はど素人であるけれど、公共住宅は大切である、長年住み慣れた住まいを追いだされるのは問題であるという、ジャーナリスト的な視点、ドキュメンタリー作家としての視点から映画を作った、など)を説明しました。

以下の写真は全て横山さんに撮ってもらったものです。横山さんありがとう!!
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もちろんこれまでに山形の映画祭とか、海外の人にもこの映画を観てもらいましたが、観客のほとんどが外国人というのはさすがに初めてでした。それに”建築”っていうと、理工系だから男性のほうが多いというイメージがあったのですが、かなり女性が多いです!
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上映が始まりました!
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上映が始まり、ダイアログが始まってまもなく、私が驚いたのは学生さんたちが熱心にノートを取っていることでした。数人の学生さんは、映画の最後までほとんどずっと書きっぱなし。字幕は、場所によっては早く消えてしまう部分があるのですが(立て続けに話すレンホウ大臣とかcoldsweats01)、それでも一生懸命スクリーンとノートを交互に観ながら書きなぐる姿に感心。普段ここまで必死で書くお客さんはまずいないのでhappy02

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彼らは代々木オリンピックセンターに宿泊しているそうですが、ここは門限があり、朝はシャワーが使えないそうで、先生と2名の学生さんは映画の途中で帰りました。この日は時間外にオリンピックセンターにチェックインしようとして断られ、重い荷物を持って都内各地を回っていたそうです。「団体で泊まれるところが他になかなかないからここにしたけど、すごく不便!!」との声続出でした。確かに、中高生の修学旅行だったらオリンピックセンターのような生活時間設定で問題ないと思いますが、大学生にはちょっと厳しいですよね。「アスリート向けなんじゃないかしら?」と真顔でイギリス人たちが話しているのが面白かったです。

上映の後は、質疑応答をしました。普段の上映会では、”映画”や”作り手”といった関心事からの質問が結構多いですが、今回の観客は建築を学ぶイギリスの大学生。URの組織・変遷、税金の投入、国の公共住宅政策、団地のコミュニティー形成、多摩ニュータウンの建替え、団地の再生、セーフティネット、野宿者支援etc、そういった質問がたくさん出ました。
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左側が私に連絡をくれたキャサリンです。
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映画作りについて私の思いを英語で説明することや、映画のあらすじ程度のレベルを英語で伝えることは、例えば映画祭で海外のゲストや観客と話した時に何度もしていたわけですが、実際にこの映画の中で取り扱われている公共住宅や国の政策、団地再生などについては、映画の字幕翻訳をしたので多少は単語を理解しているものの、やはりまだまだ難しいなと痛感しました。英語の問題もありますし、私自身、高幡台73号棟をめぐるURの姿勢や、URのあり方検討会、それを受けて国の方針・・・などの流れはわりと詳しく理解しているのですが、例えば多摩ニュータウンの建替えなどについては、新聞で報道されている程度の知識しかありません。

”語学”だけでなく、やはりその問題に対して深い知識を持っているか否かは、英語で説明するときに大きな差が生まれると思いました。また、ある物事を説明するときに、海外の人でも分かりやすいようにその仕組みを説明するには、やはり幅広い知識が必要であるとも思いました。例えば、日本の行政の野宿者対策が話題となったとき、日本には公営住宅が圧倒的に少ないという事情、住宅を借りる際は保証人や敷金・礼金が必要であるという日本独特の事情、社宅制度、派遣切りによって職と住まいを同時に失うという問題、日雇い労働者の寄せ場、危険な原発労働などが日雇い労働者たちによってなされてきたという問題・・・などの(もっともっとたくさんの事情があると思いますが)、色んな背景も説明することで、なぜ日本でこのような問題が起きているのか、対処が難しいのか、その複雑な事情を理解してもらうことが出来るのではないかと思うのです。

そして、それらの事情が日本特有のものである、海外では珍しいのだという知識・認識がないと、なぜこれが日本で起きているのか、国際的なレベルから見てそれが如何に特殊な事例であるかを、問題意識を持って説明できませんので、日本の事情だけでなく、海外の住宅事情や社会事情なども、幅広く知識を持っていることが必要だと思います。

ある特定の問題だけに精通するのではなく、広範囲に社会を見て、諸問題のつながりを理解していることが重要だと思いました。アンテナを広く張っておきたいと思います!
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横山さんも入って全員でhappy01
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代々木オリンピックセンターの門限(!)もあるため、まだまだお互いに話したいことはたくさんありましたが、10時過ぎにお開きとなりました。
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面白い体験でした。なお、今回のスタディーツアーの後、学生さんたちは各自発表をしなければならないそうです。どんな発表になるのでしょうね? とても楽しみです。

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