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[jp] ドキュメンタリーかフィクションか

中村さんの講演会の翌日は、当初は新宿2丁目のカフェ☆ラバンデリアの、ネコと一緒に映画を観るというコンセプトのイベント「シネマdeネコちゃん」にて、「空っ風」の上映がされるよていでしたが、今回の上映中止を受けて「空っ風」の上映を止め、「鬼平犯科帳」を観ることになりました(「空っ風」から「鬼平犯科帳」って、すごい変更じゃないですか?coldsweats01

私もHDCAMテープを受け取った後で、ラバンデリアに立ち寄りました。以前、うてつあきこさん主催で「ブライアン~」の上映をラバンデリアでやっていただいたことがあるのですが、オーナーの藤本さんとは実はあまり直接お話しする機会がありませんでした。しかし、大阪のご出身だという藤本さんは、大阪万博がどのようなものだったのか(何十回も通ったそうです)、当時の大阪府民にとって千里ニュータウンにはいかに近未来都市的な響きを持っていたのか、をものすごいテンションで話してくれましたhappy01

中村さんもやってきて、藤本さんのハイテンションは更に高まり、挨拶もままならぬうちに千里ニュータウンについて盛り上がります。

やがて、「鬼平犯科帳」の上映時間になりました。店内には”らしさ”を演出するために、ポスターも貼られました(さすがに上映中のみでしたがcoldsweats01)。ミラーボールに「鬼平犯科帳」って。。。
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以前、ラバンデリアにうかがった時は、猫たちは拾われてきたばかりで、手のひらの上に乗るようなサイズだったのですが、すっかり生育したようでした。店内をねこが自由に歩き回る状態で観る「鬼平犯科帳」は、なんだか特別感がありました。

スクリーンの前に立ち、顔を洗い続けるネコ。ネコだから許される行為です。
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結局、休憩時間もはさんで2シリーズを観ました。休憩時間に、映像作家の根来祐さんに電話をし、ラバンデリアにお誘いしました。「鬼平犯科帳」の2本目が終わる10時ごろに到着。

根来さんとお話しする中村さん
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・・・を撮るつもりが、画面中央のネコの表情に私は釘付けになってしまいました!! 

上司に怒られ、とりあえず神妙な面持ちで、うつむき加減で話を聞く・・・まるで新人サラリーマンのような表情のネコではありませんか!
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・・・と、話が脱線してしまいました。だって、その表情にびっくりしたんですもの。

根来さんについては、このブログを読んでいただいている方には説明するまででもありませんが、これまでに摂食障害、女性の労働・生き方、性暴力被害者、移民など、ジェンダー差別や、社会的に弱い立場に置かれている人たちの目線で作品を作り続けている人です。

当事者の方が思い出したくもない被害や経験をカメラの前で語ること、事実を公にすることで当事者が受ける二次的・三次的被害など、”団地問題”以上に当事者との関係、撮る・撮られるという関係性は困難が予想されます。今回の件について、根来さんにもぜひ意見を聞いてみたいとお誘いしたのでした。

根来さんは2001年に山形ドキュメンタリー映画祭で「そして彼女は片目を塞ぐ」を上映しました。サイトの作品解説では、「摂食障害という依存症、神経症の世界を、当事者の目で追いかけたもの。監督本人が摂食障害を抱えているがその視点から自分を取り巻く環境を読み取っていく」とあります。私も以前DVDで見せてもらったことがありました。

その映画には5~6人の当事者の方が登場します。私がもらったDVDのバージョンでは削除されていたのでしょうが、映画に登場する一人と関係がこじれ、その人のパートは全て削除したと根来さんは話しました。

聞いていて、テーマがテーマですので、最初は撮影に同意してくれたとしても、その後やはり気が変わって嫌と言われることもあるだろうなと思ったのですが、驚いたのが、当事者の一人が関わるパートを全て削除してほしいと言われたタイミングは、出来上がった映画を当事者も気に入り、一緒に上映会を開催したこともあり、山形でも上映された後である、ということ。制作の過程で、とか、完成作品を観て当事者の気が変わることはままあるにせよ、一緒に上映・普及活動をしていたにも関わらず、途中で自分のパートを削ってほしいと言われることもあるのだということに、私も中村さんもとても驚きました。

根来さんはその原因について、映画の内容ではなく私との人間関係が悪化したから、と言っていました。

人間関係は常に同じではなく、時が経つにつれて良くも悪くも変化(進化するときもあれば後退する時もある)するものだと思いますが、それが作り上げてだいぶ経った映画にも及ぶ。。。当たり前と言えば当たり前かもしれませんが、やはり「映画を作る」ということは、その問題&その人に様々な形で一生付き合うことなのだな、と思いました。

その他の作品でも、数年かけて撮影している途中に制作の中止を求められたりしたことがあったそうです。以前根来さんが誰かに「ドキュメンタリーの打率(成功率)は2割」と聞いたことがあったそうで、それに深く同意したと話していたのを思い出しました。「作りたい」と思った作品のうち、実際完成にまでこぎつける作品は2割ぐらいなのだ、と。それぐらい、ドキュメンタリーを作るのは難しいことだし、奇跡的なことである、と。

私自身は今のところ自分が作りたいと思ったものは作れていますが、でも、私の場合でも、例えばパーラメント・スクエアの内部分裂が生じてしまった今はイギリスであの映画を上映することはバーバラ陣営の反発を招くと思いますし、作品自体は存在しても環境が変わったがために上映できないということがあります。

根来さんは現在性暴力の被害者のドキュメンタリーを撮っているそうで、それは企業のセクハラを裁判で告発した女性が中心人物なのだそうです。裁判で公にしているからといっても、「空っ風」同様上映の中止を求められる可能性はあるわけで、根来さんもそれを常に自覚しながら作り続けているそうです。

驚いたのは(この人からもし制作や上映の中止を求められた場合でも、作品が出来上がるように)と、その人が抜けた場合も想定しながら作品を作るようにしている、ということです。

ドキュメンタリーを作ると言うことは、以前このブログにも書きましたが、私の場合はその問題に対する関心というのはただのきっかけに過ぎず、具体的に作品を作り始める原動力となるのは”ある人”との出会いです。この人を撮りたい、この人の表情を追いたい・・・そういう気持ちが結局は作品を作る具体的な理由となるのです。

中村さんも「空っ風」が中村さんの監督作品となるきっかけはある女性との出会いだったそうですから、その中心人物が作品からいなくなっても作品が成り立つようにというのは、ちょっと想像できませんでした。

でも、それだけ根来さんは身近に切実に被写体との関係性を考えながら作品を作っているのだ、ということでもあるのかもしれません。

根来さんと中村さん
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中村さんの所属するNDSでは、現在メンバーの佐藤零郎さんが劇映画の脚本を作っているそうです。釜ヶ崎の日雇い労働者や野宿生活者のドキュメンタリーをこれまでに作ってきましたが、釜ヶ崎でドキュメンタリーを撮ることが非常に難しいということ、ドキュメンタリーとフィクションの境界線は実はとても曖昧なのだと思うようになってきたということ等から、釜ヶ崎で実際に働いている人から役者に誘い、今年もしくは来年にも撮影をするそうです。

根来さんも、センシティブな問題を撮り続けているので、必要あればフィクションで表現することもあると思う、と言っていました。

私も自分で撮影&編集をやっていますので、森達也さんの「ドキュメンタリーは嘘をつく」ではないですが、ドキュメンタリーだから事実を表現しているとは限らない、その人の主観で撮影&編集がなされるものなのだ、という自覚はありますが、でも、やはり脚本を作って撮るフィクションと、制作者が被写体と向き合ってもがきながら作るドキュメンタリーは、全然別物ではないかと思います。根来さんやNDSほどの苦労をまだ経験していないとはいえ、私はドキュメンタリーで自分がどこまで出来るのか、やってみたいなと思っているのですが。。。

これまでドキュメンタリーを作り続けてきた人たちと、ドキュメンタリーか、フィクションかという話をしたのが私は初めてだったので、いろいろと考えさせられるところがありました。

ネコも混じって!
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中村さんと根来さんがネコを抱いて撮った写真もあるのですが、ネコが暴れ、どうやってもネコを虐待しているかのような写真になってしまったので、載せませんcoldsweats02

中村さんと根来さんと
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閉店間際の時間でしたが、「家について色々思うことがある」というラバンデリアオーナーの藤本さんより、ラバンデリアを自分たちで半年かけ、クリーニング店からカフェへ改装したときのビデオを見せていただきました!
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藤本さんは、「モノの値段は家賃で決まる」と言っていました。ラバンデリアのドリンク類はどれも美味しくてボリュームがあるのに300円程度と格安です。それはここの貸主である平井玄さんが家賃を低く抑えて貸してくれているからだ、と言っていました。低い家賃で借りて、商品の値段は高めに設定して利益を上げることもできますが、それはここで実現したいことに対して理解をしてくれている貸主、そしてここを利用するお客さんのために、家賃なりの商品価格にしている、と。

自分たちで改造し場所を作った藤本さんとしては、近年のリフォーム業者たちの商売には嫌悪感を感じるそうです。安い家賃しか取れないような古い場所を、若者に受けるようなモダンなつくりにリフォームして高い家賃をとるような仕組み。そもそも、古い建物というのは安くで提供されるべきで、それを自分たちの手で改装するから面白いのだ、と。もともとヨーロッパなどで盛んなDIYは、棄てられた廃墟を自分たちで改造してスタジオやクラブにし、文化発信をする、コミュニティーを作るという使われ方をしてきた。その一番大事な”精神性”を全くなくした形で、本来は安い家賃で提供されるべきものを、こぎれいに改装して高い家賃を取る。文化がないとも言っていました。

ラバンデリアの改装ビデオ、藤本さんにお願いすれば見せてもらえるかもしれません。興味のある方はぜひお店に行ってみてください。

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