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[jp] 相手を選ばないと悲劇

先週末は連日出かけていました。土曜日はお昼から、ポレポレ東中野へ、「ハダカの城」アンコール上映に先駆けたトークイベントを聞きに行きました。

「ハダカの城」は、今から10年前に、雪印食品による牛肉偽装詐欺事件を告発した、冷蔵会社社長を追ったドキュメンタリー映画です。雪印食品といえば、食肉業界の中で超大手。その会社の不正を告発した社長は、会社を倒産に追い込まれながらも、世間からの支援によって再建を果たします。しかしながら、未だに内部告発者が冷や水を浴びる社会では、再建をしたとは言っても、以前の経営業態には及ぶべくもない状態。

映画は拝見していましたが、この日は映画に登場する社長、社長の息子さん、そして当時一緒に取材に当たっていたメディアの人も加わったトークイベントということで、行ってみたいと思ったのでした。

トークイベントの様子。壇上向かって左から、司会者の越智あいさん、水谷洋一社長の息子さんである水谷甲太郎さん、当時この問題を取材しテレビで報じた香川今生さん、「ハダカの城」監督の柴田誠さん。
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取材当時の様子などのエピソードが語られていました。

お話も興味深かったのですが、私は柴田さんお手製の一脚から目が離せませんでした。
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奥様曰く、柴田さんが自分で作ったものだそうです。こんなの、売っているのをみたことがないですから、自分で作るしかないですよね。一脚に2台のカメラを載せて、それぞれのアングルで撮影をするとは・・・! 柴田さんも自主制作監督なので、一人で撮影・編集をこなしています。機材も一人でやり易いような工夫をしていて素晴らしい! 私も見習いたいです。

自分で話すときにも撮影は続行!
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トークの後半からは、映画の主人公でもある水谷洋一社長が登壇。(中央のサングラスをかけた男性)
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映画の中でも、十分強烈な個性は伝わっていたのですが、舞台上ではさらにその存在感が強烈で、社長の登場以降は、司会の方も仕切れず、ほとんど社長の独壇場となっていました。「誤解を承知で話しますが・・・」と前置きしつつも、観客を置いてきぼりにもしかねない社長のワールドは、話を最初から最後まで聞けば理解し共感できるものの、部分的にカットして紹介すると、誤解を受けかねないような内容です。(トーク後に社長にそう伝えたら、「そうなんや!!」と言っていましたhappy01

関係者の方は、かなりハラハラドキドキでその展開を見守っていたことでしょうね・・・!

トークの最後に会場からの質問があり、「自分の父親も青果業を営んでいたが、内部告発をしたら倒産してしまった。自分の親戚もまだ青果業を営んでいることもあり、なかなか問題を表に出して広げにくい。内部告発はどうすればやりやすくなるのか?」(←詳細は間違っているかもしれませんが、大体こんな感じの内容)という質問が出ました。

水谷社長はその質問に対して「自分はメディアと協力してこの問題を広げた」とだけ答え、後はテレビで取材した香川さんにバトンタッチ。その香川さんの発言が、私にはとても印象に残ったのでした。

香川さんは、内部告発で事態が好転するか否かは、その人の「意思」と「行動」によるところが大きいと言っていました。周りの影響や先のことも考えるけれど、自分の信念に基づいて行動し、それによって周りの環境をどのように良く変えていくか考える。そういう人は、周りを巻き込んで事態を変えていく・・・といったような回答をされていました。

映画を観て、さらに水谷社長本人のトークを聞いて、この人の「おかしいと思えば、国・大企業相手だってケンカしてやる」という姿勢は揺ぎ無いものだと感じました。こういう社長自身の素地がまず根底にあり、それに周囲が巻き込まれていく、取材や応援する人も出てくる・・・ということなのだろうと思いました。

一方で、この話を聞きながら私は別のことも考えていました。それはつい最近、ドキュメンタリー映画を作っている人と話していて出た話題についてでした。現在、一部の被写体の人とのトラブルがあるそうで、制作者の深く掘り下げたいという気持ちと、被写体の「古傷に触れられたくない」という気持ちが折り合えず、映画の制作が中断しているということでした。

その人は原一男監督の指導を受けた事もある人なので、その影響も少なからず受けているのかもしれませんが、もっと深く掘り下げたい、語りたくないことでも語ってもらうことで根源的なものを問いたい・・・と思っているようでした(これは私が話から受けた印象に過ぎませんが)。

確かに、ドキュメンタリーの作り手である以上、被写体とぶつかることもありますし、語ってほしくないことを語ってもらう場合もあるでしょう。それによって映画の完成度がより高くなるということも多いと思います。

でも、一方で、原一男監督の指導を受けた人たちの映画を、これまでに10作品以上は観た機会があり(←これじゃ少ないかもしれませんが)、その中にはすごく面白いと思う作品もあれば、逆に観ていてこちらが苦しくなってしまう作品も少なからずあったのでした。このことについて、この日のトークを聞きに行って、自分なりにその理由が分かったような気がしたのです。

思えば、これは原一男監督自身が言っているのを聞いたのですが、現在は彼がドキュメンタリーを作っていない理由について、「もちろん作りたいと思っているし、例えば水俣で作りたいと思って、何度かインタビューにも行ったけど、水俣病の患者が今は2世、3世になってしまって、国と対等にケンカできる奴がいなくなっちゃった。だから撮れない」と話していました。

原一男監督自身は、国と対等にケンカができるぐらいの人を選んで、監督自身もその被写体と思いっきりぶつかり合いながら映画を作っているわけです。ちゃんと相手を選んでいる、ということです。相手を選ばなかったら、それは単にカメラによるいじめ・ハラスメントになってしまいますし、往々にして撮影中&完成後に問題も起こり易いと思います。(もちろん、撮影中に問題が生じ、撮影が続行できなくなってしまう理由は他にもたくさんありますが)。でも、原監督にあこがれて、指導もされたら、相手をそこまで吟味せずに、自分も被写体とぶつかり合うことで映画を作りたい、と思ってしまう人が出てくるのも無理ないでしょう。(※私自身は原監督の直接指導を受けたことがないので、指導内容を知らないですから、この推測は間違っているかもしれませんが)

「国と対等にケンカができる人」-私の「ブライアンと仲間たち」の主人公・ブライアンはまさにそういう人間の一人だと思いますし、水谷社長も然り。ですが、そこまでの人材はそう簡単に見つけることは出来ないでしょう。国とケンカが出来る人というのは、単に国を相手に訴訟を起こしている、ということではありません。裁判を起こしていなくても、必ずしも社会問題に関わっていなくても、その人の素地として国と対等にケンカができるようなものを持ち合わせている人もいるでしょうし、逆に国と裁判で闘っている人でも、本人の強固な意志というよりは強力な支援者に支えられて裁判を続行している人もいますから。

本当の意味で国と対等にケンカが出来るぐらいの人なのか、非凡な強さを秘めた人なのか。それを見分けることはなかなか難しいと思います。

また、被写体だけでなく、撮影する側も、「国と対等にケンカができる人」が発する膨大なエネルギーを受け止めるだけの度量がなければなりません。私自身は、ブライアンに対してぶつかり合うようなタイプの取材はしなかったものの、今振り返ると、ブライアンのような人を映画にするには、まだまだ自分自身のエネルギーが足りず、振り回されてたように思います。私の「この人を撮りたい」という気持ちの強さだけで映画は完成までこぎつけましたが、映画の中でブライアンを生かしきれていなかった、と正直思います。

・・・この先も作品を作り続けて、10~20年ぐらいたったらブライアンのような人とも対等にやっていくことが出来るようになるかしら・・・?happy02

そんなわけで、被写体とどっぷり四つに組んでぶつかり合いながら、映画のテーマを深く掘り下げて行きたいという場合は、それに耐えうるだけの相手を選ばなければ、撮影者自身もそれを受け止められるだけの度量を備えていなければ、そして言うまでもなく根底に両者の信頼関係がなければ、双方共にぶつかり合いながらの作品作りを望んでいなければ、お互いに悲劇になるだけ(心に傷、撮影の中断、上映の中止etc)・・・、そんなことを考えたトークイベントでした。

あ! でも、柴田監督の取材スタイルはぶつかるのではなくて、ある程度の距離を保ちながらひたすらじっくりと撮影するような感じと見受けました。相手が国とタイマン張るような人でも・・・catface

映画は10月13日から2週間ポレポレ東中野で上映されるそうです。

追加:
ちなみに、今回のトークイベントのために大阪から上京した制作チームご一行は、東京のカプセルホテルに泊まっているそうです。女性用のカプセルは1泊4000円もするんですって! 「東京の宿は高い」と嘆いていました。でも、カプセルごときで4000円も払うって、もったいなくないですか? 私は大阪で(といっても釜ヶ崎ですがcoldsweats01)、個室で1泊1500円だったのに。東京都内でも1泊3000円以下でビジネスホテルはないのかしらん???

ちなみに(2)、この前ネットで都内の民家泊1泊700円というのを見つけたのですが(多分これは都内最安値でしょう)、ちょっと怪しげで、もしかして神待ち系?!という感じだったので、ここを他人にオススメするのはどうかな・・・と思っていますcoldsweats01

どこか、東京で格安のビジネスホテルをご存知の方はご一報を!

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コメント

☆「DVD2種類」を注文しましたので,ご精査頂きよろしく取り計らいください。

☆詳細は注文Mailをご覧ください。急ぎませんので御願いします。baseball(安)

投稿: 広島安楽亭 | 2012年10月 9日 (火) 21時24分

広島安楽亭さん

こんにちは! コメントをありがとうございます。
そしてDVDのご注文も!! とってもうれしいです。
メール、確かに拝受しました。こちらからも返信差し上げましたので、よろしくお願いしますhappy01

投稿: yumiko | 2012年10月 9日 (火) 23時42分

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