[jp] ドキュメンタリーのハードルを低く!
ここ数日あまり、10月28日(日)に予定されている、JCJジャーナリスト講座の内容を考えていました。私はこの講座が初めてなので、先週末は第1回目の高知新聞(元北海道新聞)記者の高田昌幸さんによる、「報道の文章をどう書くか」という講座を見学しに行きました。
定員40名をかなりオーバーしているのでは?と思うほど盛況で、マスコミを志望する学生らしき人たちの参加も多く見られました。
高田さんの講座は、分かりやすく、とても実践的で、マスコミ志望の学生には就活の試験にも役立ちそうなアドバイスも沢山ありました。また、マスコミを目指しているわけではないけれど、ジャーナリズムに関心があるという社会人にとっても、分かり易い文章を書くのに使えるテクニックが満載で、私も(なるほど~)と思いながら聞きました。
・・・さて、では私が担当する回はどうなるのか・・・
私は、私自身が実践していること、そしてそんな私に講師の誘いをしてくれたJCJが私に期待していることは、高田さんに期待するものとは根本的に違うのだと思っています。
まず、大きな違いとして、私の場合は「インディペンデント」(もしくは「フリーランス」)の表現者であるということが、大前提にあると思います。これはとても大きな違いで、インディペンデントか否かは、あらゆる過程(題材、取材、撮影、構成、編集、上映etc)に違いが出てきます。また、起こる問題も違います。
よって自分の講座は、「インディペンデント」という立場で社会を記録して、情報発信をしたいという人に向けた内容ということになるのだと思いました。マスコミに就職希望の学生さんにとっては、ほとんど役に立たない内容かもしれませんが、マスコミを経て将来フリーになる人には、何か参考になるかもしれません。
1回きり、100分の講座ですので、撮影や編集の技術的なことには触れませんが、技術よりも大事なのは考え方や心構え(特にインディペンデントのドキュメンタリーは)だと思うので、考え方や制作のベースに役立つようなことをお話したいと思っています。
講座では、「インディペンデント」であることと、「映像による表現」であること、そこから派生する様々なことに触れたいです。私の信条として、ドキュメンタリー制作の敷居を低く、あらゆる人が表現者に、という思いがあります。なので、「お金がない」、「企画が通らない」etcがゆえにドキュメンタリー制作をあきらめるようなことがあってはならない!と思うので、あらゆる手段を駆使して、マスメディアに頼らず、自分たちで取材し、情報発信していくための方策などをお伝えできたらと思っています。
でも、何よりもまず、映像を全くやったことがないという人にとっては、「ドキュメンタリーを撮る」と聞いたら、ハードルが高そうに聞こえてしまうのではないでしょうか? 何か大きな社会問題を撮らなければならないのでは?と思ってしまう人もいるかもしれません。でも実際は、あらゆる”社会問題”は(誰かしらの)日常生活の延長線上にあり、私たちの身の回りで日々面白いことや困ったことが起きています。それらを記録すること自体、既に”ドキュメンタリー”の制作行為だと私は考えます。
そのことを示す、好都合な映像を見つけました。それは私が4年前にロンドンで撮影した映像で、偶然見かけたストリート・アーティストにインタビューをしたものです。道路にチョークでステキな絵を描いていたので、それに興味を持って撮影をしたのですが、会話が始まり、路上での表現行為を考える・・・という思わぬ展開になりました。
社会を考えるきっかけというのは、実はどこにでも転がっているということが、この映像によってより具体的にイメージとして伝われば・・・と思います。
また、映像の初心者にとって、ストリート・アーティストは格好の練習対象でもあります。私もこれまでに沢山、色んな路上アーティストを撮影させてもらいました。人にカメラを向けるというのが、まず大変なことで、嫌がる人が多いのが普通ですが、路上アーティストの場合、人に見てもらいたくて公の場で披露しているのですから、撮影をOKしてくれる可能性が高いです。そして、絵になりやすいので(←これもうれしいポイント)、こちらの技術力不足をカバーしてくれるのです。
そんなわけで、路上にいるパフォーマーの撮影を、私は良くオススメしています。しかし、同じく路上にいるからと言って、野宿生活の人を撮影するのは、逆にこれは超ハードルが高いですよね。居たくて路上にいるわけじゃないんだから。無礼な撮影は、最悪の場合殴られるでしょう
ロンドンのストリート・アーティストを撮影した映像はこちらです。オリジナルは英語のキャプションを付けていたので、その部分のみ塗りつぶして日本語字幕を入れています。撮影があまりにもガタガタでスミマセン!
一方、「インディペンデント」は自分で自由に情報発信が出来る反面、リスクもあります。講座では、インディペンデントならではの注意点についても触れたいと思います。撮影時の注意点、ネットで公開する際に気をつけること、撮る・撮られるという関係、カメラの可能性と暴力性、マスメディアとの付き合い、記者クラブ制度・・・etc、自分の苦い実体験()も交えながら話します。
JCJのジャーナリスト講座の概要は以下。このロンドンの映像を含め、新旧さまざまな映像をふんだんに交えて(30分以上の映像を用意!)「ドキュメンタリー映像を撮る」ことについて語ります&皆さんと語り合いたいです。ご都合の合う方は是非いらしてください!
開催概要:
2012年10月28日(日)13:30~17:00
築地社会教育会館・視聴覚室
(東京都中央区築地4-15-1 最寄り駅:東銀座駅または築地市場駅より徒歩5分)
①「脱原発報道で『こちら特報部』の果たした役割」
東京新聞・野呂法夫デスク
②「ドキュメンタリー映像を撮る」
早川由美子
※定員40名(要予約)
※申込はJCJ事務局 jcj@tky.3web.ne.jp または電話03-3291-6475(土日休み)
JCJジャーナリスト講座は全7回。講座一覧はこちらをご覧ください。
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コメント
■とても興味のある講座ですね。できれば,参加したいのですが「広島の空の下」でも視聴できたら良いですね。
☆送っていただいたDVDは何度もみて聴いています。定年直前に亡くなった友とロンドンを旅行した想い出があります。それから...
投稿: 広島安楽亭 | 2012年10月21日 (日) 21時12分
広島安楽亭さん
こんにちは! コメントをありがとうございます。講座、東京での開催なので、残念ですね。。。
DVDを何度も観てくださっているとのこと、ありがとうございます! ロンドンに旅行されたこともあるなら、なおさら風景になじみがあることでしょう。
投稿: yumiko | 2012年10月22日 (月) 22時35分