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[jp] 「居候」改め・・・?

28日の日曜日は、JCJのジャーナリスト講座で「ドキュメンタリー映像を撮る」という講座を担当しました。講座の前半は「脱原発報道で『こちら特報部』の果たした役割」というテーマで、東京新聞の野呂法夫デスクによる講義でした。

はじめに、運営・司会の須貝さんによる挨拶
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須貝さんによれば、20年以上前にはJCJでジャーナリスト講座を開いたこともあるらしいのですが、それ以降はずっとなく、昨年から本格的に始めたとのことでした。昨年の平均的な参加者は20名ほどで、今年は40名を越える人たちが参加しているので、昨年の参加者の口コミで評判が広まっているのかも、と話していました。

カルチャーセンターなどで「一眼レフの写真の撮り方」や「文章講座」のようなものは時々見かけますが、”ジャーナリズム”を主軸にしたそれらの連続講座というのは、確かにほとんど聞いたことがありません。需要はあるのですから、今後も続けていって欲しいと思いました。

野呂さんの講義の様子
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野呂さんによると、東京新聞、さらに「こちら特報部」は、社内でも、マスメディア界においても、かなり特異な存在なのだそうです。「こちら特報部」が、脱原発について積極的に踏み込んだ報道が出来ているのはなぜなのかということを、他紙の報道も交えながら解説していました。

近年マスメディア離れが指摘され、関係者も必死になっているようですが、マスメディア全体が「こちら特報部」化していけば、将来も生き残れるのでは?・・・などと、話を聞きながら思いました。

約1時間半の講義が終わり、15分の休憩の後、今度は私の番になりました。普段のJCJのイベントと異なり、受講者の約半分ほどは学生らしき人たちでした。なので、レジメを用意して、大体の時間配分を決めておいたつもりでしたが、ビデオカメラにも触ったことがない人たちでも入りやすいように、私自身がビデオカメラを始めたきっかけについて時間を割いて話しました。また、ロンドンのジャーナリズム専門学校のエピソードなども紹介しました。

写真は柴本さんに撮影していただいたもの。どうもありがとうございます!
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配布したレジメには、講座の大前提として、「インディペンデントの表現者として」の話であることを書きました。何らかの後ろ盾があるマスメディアと、何もないインディペンデントでは、「装甲車と素手」ほどの違いがあり、その違いはテーマ決め、撮影、編集、上映すべてに及びます。(後ろ盾がないというのは、必ずしも不利ではなく、利点&魅力も沢山あります)

なので、私がこの日お話したことは、最初から最後まで全て”インディペンデント魂”で貫かれていたと思います。

また”ジャーナリスト”ではなく”表現者”と書いたのにも、私なりの考えがあります。社会問題を扱う、ジャーナリズム的なテーマと取材方法だったとしても、”映画”という表現手段を選択するからには、”総合芸術”・”エンターテイメント”でなければならない、と思うからです。

実際の講義の中では、自己紹介の後は、一般的に何をどう撮るか、という話をしました。ドキュメンタリーの題材をどうやって見つけるか、先日このブログでも紹介したロンドンのストリート・アーティストの動画も紹介しながら説明しました。

また、インディペンデントを目指す人たちのために、マスメディアの中におけるインディペンデントの扱い・現状についても話しました。記者クラブの存在、スラップ訴訟、テレビでの放映(スカパーとの契約の顛末)について言及しました。

今は誰でも簡単に撮影・編集が出来て、さらにはYouTubeなどで世界へ向けて発信できてしまうので、著作権やカメラの暴力性についても触れました。被写体とのトラブルについて、過去の上映会中止のエピソードなども交えながら、なるべくトラブルを避けるにはどうすれば良いかなども話しました(かなりケースバイケースなんですが)。

カメラの暴力性、撮る側・撮られる側の思惑の違いについては、「さようならUR」のDVD特典映像の中に入っている「UR職員を誘い出すために村井さんと結託した」動画を紹介しました。

レジメ通りに話していったつもりでしたが、前半部分を丁寧に話しすぎたためか、それとも動画の再生などでちょっとずつ時間が嵩んで行ったのか、気がついたら残り時間は後25分ほどになっていました。村井さんの映像は約20分。事前に用意しつつも流さなかった動画は既に2つあり、村井さんのをこのタイミングで流すかどうか一瞬迷いました。

しかし、私がどんなに言葉を尽くして説明しても、あの村井さんとの緊迫した赤裸々なやり取りほど、両者の思惑の違いがよく現れているシーンはないだろうと考え、映像を流すことにしました。

映像を流したら、やはり残り時間は後5分ほどしかなくて、質問を2つだけ受けて終了しました。最初は(90分も持つかな?)と思っていたぐらいですが、終わってみると、あと20~30分ぐらいあったら、用意したものが全部話せて、質問もちゃんと丁寧に答えることができたのでは?と思いました。

とりあえず無事講座が終了し、交流会会場へ向かいました。席に座るなり、周りの人たちから口々に村井さんの映像についての感想が出ました。テレビや映画などでは、あそこまでの「舞台裏」は表に出る機会は滅多にないでしょうから、かなりインパクトがあったようです。上映して良かったと思いました。

活字メディアの記者からは、「自分も取材で経験をしているので、両者の思惑の違いは良く分かるけど、やはり”映像”で取材するのは、もっとハードルがありますね」、と言われました。確かに、活字メディア用の取材ならば、URも取材は応じていたし、住民の側の取材もやりやすかったかもしれません。でも、映像だからこそ、ハードルを乗り越えられた時には、よりリアルなものが記録できるのだとも思います。

交流会は20名を超える人たちが参加し、自己紹介タイムがあって、そこで初めてどんな人たちが参加しているのかが分かりました。ざっくり言えば、半分がマスコミ志望の大学生、4分の1が現役の新聞記者やテレビカメラマン、残りは引退したマスコミ関係者やJCJの運営スタッフ、という構成でした。

好・不況に関わらず、マスコミ業界への就職はいつの時代も激戦なのだと思いますが、就職のために大学に長く留まり続けている人や、マスコミ業界でアルバイトやインターンなどをしている人たちが多く、その頑張りように驚きました。

普段、私の映画の上映会では、比較的年齢層が高く、市民運動に関わり、マスメディアには懐疑的・・・という人が多く集まるので、この日の交流会のように、マスメディア志望の学生と現役のマスメディア関係者がほとんどというのは、私にとっては逆に珍しいことです。

交流会の最後には、マスコミ志望の学生さんたちに向け、現役の新聞記者たちから就活のアドバイスがありました。アドバイスの多くは、小手先の面接テクニックではなく、もっと根源的なものでした。「文章の上手さは重要ではない。荒削りでも可能性を感じさせるような人」とか、「内側からやる気と若さが溢れていて、一緒に働きたいと思わせるような人」とか。(結局、人を採用するってそういうことだよね)と思うものばかりでしたが、現在就活中のデスペレートな人たちにとっては、今さら、このタイミングで人間的な素養を言われても困ったのではないでしょうか?coldsweats01 

自己紹介の中で、「今日の話を聞いて、インディペンデントで報道するのもいいなと思うようになった」と言ってくれた学生が一人いたので、それはとてもうれしかったです。

皆さんの就活が望む方向に進むことをお祈りします!! 

交流会の様子
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ところで、交流会で気になったことがありました。私がこれまで散々ブログやプロフィールにも書き、上映後のトークなどでも話してきた実姉宅での”居候”生活ですが、交流会で隣の席になった人から「プロフィールに”居候”と書いてあったから、どこかの有力者がバックについていて、愛人関係を結んでいるんでしょ?」と言われたのです!! 私はびっくりして、他の人にも聞いてみたのですが、「”居候”って聞いたら、多分、彼氏とかそういうのだろうなと想像していた」と言われました。

「え~、それなら”同棲”って書けばいいじゃないですか?」と言ったのですが、「”同棲”って書くのを憚って”居候”って書くんじゃない?」と。。。

・・・そういうものなのですかcoldsweats02coldsweats02coldsweats02?!・・・

私はこれまで4年近く”居候”という言葉を好んでプロフィールに使ってきましたが(大学の講義などでも)、一体どれだけの人に「有力者の愛人」という誤解を持たれてしまった事でしょう!!!!

”居候”という言葉を使わないほうがいいのか。でも、この居候状態というのは、私の生き方にも、作品作りにも影響を与えていると言えます。なので、書いたほうが良いと思っているのですが。。。

では、「居候(※愛人や同棲ではありません)」と書くのはどうか。・・・でもそこまでして”居候”をわざわざ説明するのもなんだかなぁと思うし。

そんなわけで、今後プロフィールをどう書くかが目下の課題です。

報告を長々と書いてしまって、そろそろ切り上げなくちゃと思いつつ、さらに書き続けてしまうのですが、今回の講座がどうだったのかを須貝さんに後日お聞きしました。今後の参考にしたいと思ったので。

好評だったのはやはり村井さんの映像で、被写体との関係の持ち方、両者の立場の違いがある中で、それでも協力しながら撮影していくことの難しさについて、あの映像を観れば学生でも良くわかったのではないか?と書いてありました。

一方で、著作権、スラップ訴訟やスカパーとの契約についてなどは、実際にインディペンデントで活動をしている人にとっては、切実な問題ではあるけれど、まだ学びの段階である学生にとってはやや遠い話であるのでは?とも書かれていました。

確かに、私はインディペンデントで表現したいと思っている人に向けて講座の内容を構成したので、インディペンデントを目指すなら撮影&編集技術以前に、一番最初に気をつけるべきことを、まず言っておかなければという気持ちでこれらを話しました。しかし、実際の受講者の多くは、マスメディア志望の学生、もしくはマスメディア関係者でしたので、そもそもインディペンデントとして心得ておくべきあれこれについて、どこまで強い関心を持っていたかは疑問です。(でも、だからと言って、インディペンデントの講師としては、そういう大事なことをはしょるのもどうかと思いますが)

また、須貝さんからは「映画を編集するうえで、考えるべきこと。エンターテイメント性をどうつくるか。特にエンターテイメン性をどう醸し出すか、手法、アイデアを含めてもう少し詳しく知りたかった」とも書いてありました。

私は常々、ドキュメンタリー制作は撮影や編集の具体的な技術ではない、心構えが大切なのだ、と思っているのですが、特に「編集」に関しては自分が以前担当したメディアールの講座でも、様々な大学やメディアセンターでも、「技術的」、「個別具体的」な指導が中心で、編集の心構えについてはあまり見聞きする機会が少ないです。

私自身も、「大切なのは技術ではない」といいながら、実際には編集を教える際に、「編集ソフトの使い方」(←これも覚えるのに時間がかかるものなので)や、生徒さんの製作途中の作品を観ながら、部分的なアドバイスをする・・・ということが多いです。でも、それは単に”編集作業”でしかないですよね? そのもっと前段階の「編集についての考え方・姿勢」を、映像をまったくやったことがない人たちに伝えるには、どうしたら良いのか・・・

私がこれまでに観たドキュメンタリー映画の中で(これぞ究極の編集!)と思った作品があります。それは「LIFE IN A DAY~地球上のある一日の物語」(リドリー・スコット&トニー・スコット兄弟製作総指揮)という映画です。

公式ホームページより、その作品について引用すると・・・

YouTubeが贈る、世界初、地球規模の歴史的な試み。
話題騒然のソーシャル・ネットワークムービーが誕生!

「2010年7月24日(土) あなたの日常の一コマを記録しませんか」

世界中の人々が過ごした、それぞれの“一日”を撮影し、動画を投稿、その中から、魅力的な映像を編集して、1本のドキュメンタリーにするというプロジェクト、「LIFE IN A DAY」。

YouTube上で動画募集の告知をスタートさせると、世界192カ国から、のべ80,000本、時間にすると、なんと4,500時間を超える作品が投稿された。

その中から選ばれたのは、332組342人もの動画。朝起きてから寝るまでの日常の風景をとらえたもの、あるいは、プロポーズから結婚、出産、金婚式まで、ライフサイクルに沿うように示される一連の動画、自転車で世界を旅している韓国人男性や靴みがきのペルー人少年のエピソードなど、それらが織りなす美しく、ユーモラスで、感動的な映像たちは、今まさに地球上で起こっているだろう日常を追体験させてくれる。

世界はひとつにつながっている―映像を通し、その普遍的な思いが伝わってくる、画期的なソーシャル・ネットワークムービーが誕生した!

この映画は、YouTube上でプレミア上映され、上映後にはサンダンス映画祭会場から生中継で、ケビン・マクドナルド監督と製作スタッフ、そして動画を投稿した”監督”たちが壇上に上がり、Q&Aがありました。私はリアルタイムでそれを観て、(これが究極の編集ムービーだっ!)と、一人パソコンの前で興奮していたのを覚えています。

世界中の、様々な人が、それぞれの思惑で撮った映像を、1本の物語として紡ぐ・・・。応募された映像を観て、映像を絞り込んでいく視点、それを作品として纏め上げていく過程についてのケビン・マクドナルドと製作スタッフたちの話は、編集の何たるかの片鱗が語られた、とても貴重なQ&Aだったのです! (そのQ&A、YouTube上にアーカイブがあるのを発見! 全編英語なのですが、興味のある方は是非ご覧ください)

「編集」を語るには、この映画を再度詳しく観て、その構成を細かく分析したり、ケビン・マクドナルドの話を聞き返して、参考になるようなストーリーを書き出したりするのも、分かりやすい例として使えるかもしれません。

映画をただ観るだけでも、十分勉強にはなりますが、良質な1本の映画をひたすら繰り返して観て、その構成を詳細に分析するのも、有効なやり方だと思います。私は以前、フィンランドのドキュメンタリー映画(英語字幕つき)から、日本語字幕に翻訳する作業を依頼された際、翻訳のためにひたすら繰り返し再生⇔停止を繰り返して観ていたら、物語の展開や各パートのつなぎ、音の使い方など、とても参考になったからです。

また、「さようならUR」が9割ほど完成した時に、2回に分けて20名ほどのドキュメンタリー監督を呼んで批評会を開き、とても詳しくアドバイスや突込みをもらったことがありました。たった1時間程度の映画ですが、3時間近く容赦ないコメントの嵐で、それは大きな苦痛も伴う会だったのですがcoldsweats01(←でも、本当にありがたいことですよね、真剣に自分の映画を観てアドバイスしてくれたわけですから)、その批評会でもらったアドバイスを受け、自分の中でもう一度自分の立ち位置を見つめなおし、実際に大きく作品が変わった部分もありました。

批評会前と後で、どのように作品が変わったのかを、具体例を見せながら説明するのも、「編集とはどういうものか」とか「編集によってどのように変わるのか」が、やったことのない人にも分かりやすい形で伝わるかもしれません。

今回の講座を通じて、私自身でも色々な発見がありました。より伝わるには、どうしたら良いか、ドキュメンタリーをやったことがない人に、どうやったら魅力を伝えられるのか・・・。今後の課題も見えたような気がしました。

そんなことを考えたJCJジャーナリスト講座でした。講師として声を掛けていただいた須貝さん、JCJスタッフの皆さん、そして受講していただいた皆さん、どうもありがとうございました。ぜひ、講座の感想などを教えていただけると、今後の参考と励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。

最後に打ち上げの写真。お店のマスターが撮ってくれた写真です。
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どうもありがとうございました!

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コメント

☆「用意周到」で,とても克明な研修報告で感銘しました。プレゼンもしっかり準備・考察されていますね。

☆マスメディアの世界もジャーナリストの方たちの研修・努力で支えられていることが分かりました。「居候」談義も愉しいですね。
それから...

☆☆☆☆☆

投稿: 広島安楽亭 | 2012年11月 2日 (金) 14時52分

広島安楽亭さん

コメントをありがとうございます!
私からのメール届きましたか・・・??

投稿: yumiko | 2012年11月 2日 (金) 17時10分

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