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[jp] ”働かない移民”という衝撃

すみません、ずいぶん時間が経ってしまいましたが、上映会の報告です。

7月6日(土)は、日仏会館の「住宅政策の新たな挑戦~貧困化、高齢化と移民の社会にどう応えるか?」に参加しました。

日仏会館は、恵比寿ガーデンプレイスのすぐそばにあります。
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朝10時から夕方5時半までという長丁場のイベント。しかも、この日から梅雨が明けて、朝からものすごい暑さ。

日仏会館の中のチラシコーナー。
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今回のイベントのチラシもありました!
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会場入り口まで行き、今回連絡をくれた日仏会館の研究員・エレーヌさんと初めて会いました。専門の研究分野は、「日本人と結婚して日本で暮らす中国人」だそうで、日本語が堪能です。

イベント始まりの挨拶。向かって左側の女性がエレーヌさん。
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朝10時と言うこともあり、会場のお客さんはそう多くなかったのですが、1本目の作品『移民の記憶~マグレブの遺産 第二部 母』を見ました。3部作で構成されるこの作品は、アルジェリアからフランスに移民として渡ってきた人たちを、移民の目線で寄り添って描かれた作品です。第1部は父、第3部は子どもだそうです。

ヨーロッパへの移民と聞くと、イギリス同様、私は旧植民地の関係で移民として暮らす人が多いのだと思っていました。そういう面も確かにあるのですが、それ以外に、ルノーやミシュランなど、フランスの大企業が、フランス国内での労働力不足を安く補うために、アルジェリアなどの国々へ、リクルートに出かけ、それで大量の労働者をフランスに連れてきたのだそうです。

その後、新規の労働者の受け入れをストップし、代わりに、移民として連れてきていた労働者たち(そのほとんどが単身の男性)の家族を移民として受け入れることにしました。その政策によって、妻たち、写真だけでお見合いをした嫁(満州の花嫁のよう!)、子どもたちと、どっと押し寄せてきたのだそうです。

そんな彼らを収容するために作られた”公共住宅”。フランス政府による、同化目的の”教育”。

この日は「さようならUR」との二本立てだったのですが、国の都合による住宅政策、そしてそれに翻弄され、住まいを奪われたり、変えられてしまう人々の様子は、移民であれ、自国民(庶民)であれ同じ、と、その共通性に驚きました。

5分ほどの休憩を挟み、「さようならUR」の上映。鑑賞中の反応は、結構よかったような気がします。上映後、フランスで「ロマ」民族の研究をしている人からは、「フランスで起きていることと全く同じだ!」という感想をもらいました。

無事、上映が終了し、午前の部が終わりました。お昼ごはんは、日仏会館の会議室でお弁当ランチでした。

日本のお弁当と、フランスの水(ボルビック)というのが、日仏会館っぽい・・・?
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普通に美味しいお弁当でしたhappy01

会議室は、それこそ、国際会議に使う風の、”ラウンドテーブル”でした。
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このお昼ご飯の時間に、色んな方とお話しする機会がありました。驚いたのは、(こういう場所だから当たり前なのかもしれませんが)、フランス語をネイティブ並みに話す日本人、日本語をネイティブ並みに話すフランス人ばかりだったということです! 私はもちろん、フランス語は全く話せないのですが、相手側が日本語を完璧に話すので、何の問題もありませんでした。

そしてもうひとつ。日本の公共住宅、団地、URなどを専門に研究している、フランス人が少なからずいるということ! エレーヌさんの「日本人と結婚して日本に住む中国人」という視点も、かなりニッチな分野(失礼。でも、結婚している数からすると、決してニッチではないのかもしれません。研究が盛んなのかは分かりませんが)だと思うのですが、フランス人で、UR団地の研究が専門なんて人がいるとは、私は全く想像していませんでした!

お昼休みの後は、午後の部。午後はラウンドテーブル形式で、日・仏、各分野のエキスパートからの報告だったので、会場の受付では同時通訳の機器を貸し出していました。
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実は私、同時通訳の機材を初めて見ました。どうやって耳にかけるのか?というレベルから興味津々。
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初めての同時通訳機器で、ワクワクしながら午後の部の開始を待ったのですが、開始5分で(これ、超疲れる!)と気が付きました。テレビで時々同時通訳音声がニュースで流れることがありますが(アメリカ大統領選の速報スピーチとか)、そういうのはせいぜい数分です。会場では大きなマイクでフランス語が話されていて、同時通訳の小さな機器から漏れ伝わってくる、しかもスピードが一定でない同時通訳の言葉を聞き続けるのは、かなりの集中力を要します。

(え・・・、これが5時半まで続くの・・・)と、ちょっと気が重くなったのですが、次第に同時通訳の独特の語り調にも慣れ、最後の方は大丈夫でした。

会場の様子
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プレゼンの様子
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稲葉さんの隣でプレゼンをしているフランス人は、フランス(およびヨーロッパ圏)における「ロマ」の実態について報告。ロマについては、イギリスでも社会問題として取り上げられることが多いですが(大抵は勝手に一定期間住み着いて、散々散らかしてまた別の地へ移っていくという報道パターン)、彼らの長い歴史、文化、現在置かれている社会的状況などについては、一般のイギリス人も「よくわからない」というのが実情。
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私も、ロマについて詳しくその成り立ちや実態について聞くのは今回が初めてでした。後に続く稲葉さんの報告ー日本の貧困問題は、ロマで取り上げられた問題が決してロマに限ったものではないと、強く意識させるものでした。
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稲葉さんがプレゼンの中で紹介した「現代住宅双六」。ゴールは庭付き郊外一戸建て住宅! ”郊外”とついているのがみそですね。切ないなぁ・・・
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先述した、UR公共住宅を専門に研究してきたフランス人のセシル浅沼さん。震災以降は、福島で家を追われる人たちを最重要テーマとして取り組んでいます。
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戦後は、「Made in occupied Japan」(占領地日本製)などと表記された商品が、海外へ輸出されていたそうです!(見えづらいですが、左下に書いてあります)
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日本の住宅の変遷についてのプレゼンも
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良く、URの前身「日本住宅公団」の時代は、設計者たちも夢を持ち、素晴らしい住宅を提供したいという希望に満ちていた・・・みたいな話を当時関わっていた人たちから聞くのですが、やはり”団地”の出現というものは、日本のそれまでの社会のあり方・人とのつながり方、地域のコミュニティを根本から覆すものだったのでは?と私は思います。

日本における、在日朝鮮人の高齢化問題について、在日三世でケアワーカーをされている方からの報告。
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高齢化問題が日本の大きな社会問題になって久しいですが、在日の人の高齢化問題に特化して取り上げられることは少ないそうです。しかし、ずっと貧しい暮らしだったり、国民年金がもらえない人が多かったりと、日本人の高齢者以上に過酷な状態に置かれている人が多いですよね。
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日本人と、日本で暮らす外国人の住宅についてのデータ
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アルジェリア系フランス人の研究者からは、かつての移民労働者たちの高齢化問題についての報告がありました。
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先に書きましたが、植民地から以外に、自動車産業などがアルジェリアから沢山の労働者を連れてきました。単に安価な労働力としてしか見られてこなかった、フランス国に奉仕するだけの移民でしかなかった彼らが、数十年の時を経て老い、介護を必要とする時代になったのです。それはつまり、フランス政府にとって社会福祉費の増大という、これまで想定していなかった時代へと突入したのです。

労働力が絶対的に不足していた時代に、沢山連れてきた移民たちは、仕事がなくなればやがて母国に帰ると、当時の政府は楽観的に考えていました。しかし、そんな都合よく人を使うことはできません。数十年暮らすうちに、母国とのつながりは薄れ、帰っても行き場はなく、伴侶を見つける機会を得ないまま高齢化してしまった独身男性も多くいるのです。これは、山谷や釜ヶ崎のような場所が、極端に高齢の独身男性が多いというのと同じです。

働かせるための移民が、働かないなんて・・・と、想定していなかった社会保障費の支出にフランス政府は困惑しているとの報告を聞き、”働かない移民”という言葉に私は衝撃を受けました。移民=母国民より安価に使い捨てできる労働力としか考えられてこなかったのだ、国民としての権利なんて、さらさら与えるつもりさえなかったんだ・・・という事実を突きつけられたようでショックでした。

移民に対するこの考え方は、何もフランスに限らないでしょう。そして、国の都合で勝手につれてきた移民たちが、これからはその国の”お荷物”(←政府側から見ての)になるというのも、あらゆる先進国で起こってくるでしょう。

そういう事態になったときこそ、これまでの移民政策の誤りを考えるきっかけとしてほしいと願うばかりです。

日本とフランスの公共住宅について、森先生のプレゼン
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プレゼン資料
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丸一日のイベントが終了した後は、打ち上げに参加しました。日仏会館近くの、いかにも外国人受けしそうな(?)創作和食のお店です。
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打ち上げの様子。とにかくみんな良くしゃべり、よく飲む! さすがフランス文化(?)
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店員さんがこだわりの料理を紹介するたびに、フランス語のできる人が一生懸命フランス語に訳そうとするのですが、凝った料理法のこだわりの食材ばかり。1分ぐらい説明した後で「・・・つまり牛肉ってことですね?」程度の反応coldsweats01
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記念写真
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日本とフランスの住宅問題と高齢化・移民の問題という、(果たしてまとまるのか?!)イベントでしたが、終わってみると共通課題の多い、とても有意義なイベントでした。

上映機会をいただいた日仏会館・エレーヌさんに感謝!

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