[jp] オリジン弁当が貧困を救う?!
4月30日は、NPO法人日本希望製作所主催、NPO法人グリーンツーリズムネットワークセンター共催で、『乙女ハウス』の上映会が開催されました。
今回の上映会は、希望製作所のインターンの学生さんたちが中心となって企画してくれました。韓国からの留学生が主で、若者の住まいや仕事などに関心が高いということで、私の作品の中から『乙女ハウス』を上映したいと選んでくれたのでした。
会場は東洋大学のキャンパスの一室。新しい校舎なので、設備が充実しまくりです! ひとつの教室に、スクリーンが二つも!
そもそも、私が希望製作所を知ったきっかけはちょうど2年前に、ソウルの女性映画祭に参加する前でした。ソウルに行くなら、ソウルの住宅事情を取材したいと思い、ネット上で情報を探しました。そのときに、ソウルの貧困問題や住宅問題について、詳しく書かれてある日本語のページがあったのです。
それは、Asian Bridgeのナ・ヒョウさんが来日されたときに、希望製作所で行われた講演の記事でした。韓国の住宅事情について全く無知だった私にも、とても良く分かる内容で、ぜひソウルで取材させて欲しいと思い、希望製作所にメールを出したのがきっかけです。
希望製作所の桔川さんが、親切にも取り次いでくださり、ソウルでナ・ヒョウさんをインタビューすることが出来たのでした。(しかしまだそのインタビューをきちんと編集・翻訳していないという怠慢!!)
先月、ナ・ヒョウさんたちが再度来日するという連絡を桔川さんからいただき、希望製作所の方々、そしてインターンの学生さんたちにお会いすることが出来ました。私の映画にも興味を持ってくれて、上映会のお話を頂きました。
私のような自主映像制作者の場合、映画館での上映は稀で、自主上映会を企画してくださる場合がほとんどです。だからこそ逆に、毎回の上映は上映団体ごとに個性があり、とても楽しくもあります。今回もそうでしたが、今回は更に、頂いた上映料には特別な意味が込められていました。
というのも、現在、日本と韓国の関係が非常に悪くなっていることを懸念した、元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんが、日本と韓国の友好のために活動している団体に助成金(寄付金?)を出し、日本希望製作所もその助成を受け、その中から今回の上映会の上映料を出していただいたそうなのです!
「日本と韓国の友好のため」と言うと壮大すぎるのですが、私は今回の出会いをきっかけに、それを私だけにとどめることなく、日本と、韓国のそれぞれの人たちに広げて、還元していけたらと思っています。
上映のあとは、歩いて懇親会の会場へ向かいました。会場を提供してくださった、東洋大学の青木先生の、ゼミ生・卒業生の方たちも来ていました。環境、農業や地方での生活などに興味のある方が多く、「東京では家が無い。地方には空き家がある、でも仕事がない」という課題をどう乗り越えていくかという話も出て、とても興味深く聞きました。
地方でお金をかけずに暮らすことは可能ではありますが、例えば子供が大きくなって大学に進学するとなったとき、まとまった“現金”(授業料)がかかったりして、私たちはやはり貨幣経済とは無縁ではいられないのです。青木先生は、「東洋大学がそういう学生たちを受け入れる仕組みを作ったらどうか」と話していました。
『乙女ハウス』は住宅の問題だけを取り上げていますが、家の問題というのは、どうやって生活して行くか、仕事や収入の問題とは切り離して考えることは出来ません。家がなくては大問題ですが、家があっても、仕事が全くなかったらそれもまた難しいわけで・・・。また、自分の家や仕事の確保だけではなく、地域全体がどうか(商店街がなくなり、買物難民になる。高齢者しかいないなど)も重要です。改めて、住宅の問題を考えることは、社会全体の問題に関わることなのだと実感しました。
懇親会では、映画を観てくれたインターンの留学生から「映画を見て疑問を持った」と言われました。「映画に出てくる若い日本人女性たちは、なぜあんなに貧乏なのか?」と。その人は、韓国からの女子留学生でした。「日本人なのに、なぜ稼ぐことが出来ないのか? 私は外国人だけど、アルバイトをしながら何とか生活しているのに」と。そして、「貧乏な人にはオリジン弁当がオススメですよ!」とも・・・??!!
聞くと、彼女はオリジン弁当でアルバイトをしていたのだそうで、24時間営業の店で、深夜から早朝までのシフトに入れば、時給は1100円以上もらえ、50~60代の日本の貧困女性たちも沢山働いていたそうです・・・
確かに彼女は自分で努力して、しかも海外で一人でよく頑張っていると思います。留学生の方がよっぽどたくましいし、彼女のような人からみれば「なぜ日本人なのに貧困に陥るのか?」と不思議に思われるかもしれません。でも、貧困状態に陥る原因は様々で、例えば学歴がないのでキャリアアップできるような仕事に就けなかった、派遣やアルバイトを転々としてきた、過酷な残業で体を壊した、職場環境が悪く精神的に病んでしまったetc、それぞれに事情があるのです。一度体を壊してしまうと、軽作業の仕事しか出来なくなる人もいます。メンタル面の問題を抱えている場合、接客を恐怖に感じる人もいるでしょう。
私はそんな事情を話しましたが、彼女によると、それでもオリジン弁当はオススメらしく「接客が苦手な人でも、深夜の営業はあまりお客さんが来ないので大丈夫!」とのことでした そうか、そんなにオリジン弁当は貧困の味方なのか・・・ いざというときのために覚えておこうと思った私でした。
この日は、『乙女ハウス』に加え、『ホームレスごっこ』の上映もしました。上映の度にいろんな感想をもらうこの作品ですが(良くも悪くも)、今回はクリスチャンの人たちから「なぜ聖書の言葉をホームレスの人の映像にかぶせて使ったのか?」という質問をもらいました。すごく違和感を覚えたそうです。
そのシーンに関して、私なりに意図はあるにはあり、説明もしましたが、でも後から考えてみると、意図や理由といったものは、結局私の後づけのような気もしました。自分が感じた、新宿という町の”違和感”を丸ごと映像にした、というのが正直なところかもしれません。(ちなみに長年、野宿者関連の映像を撮り続けている土屋トカチさんと飯田基晴さんからも、この映像を見て「色々と聞きたいことがある映像です」という意味深なメールをもらってしまったので、近々(恐る恐る)聞きに行って見たいと思います)
今回、インターンの学生さんたちの中心となって、この上映会を企画してくれたジネさんは、もうすぐ留学を終えて韓国に帰国されるそうです。この日は、懇親会で希望製作所の理事さんからインターンの修了証が手渡されました^^
楽しい上映会と交流の機会をありがとうございました!!
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